水田景観の評価と農村住民の意識との関係

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要約

水田景観に関する意識は農村住民の属性によって異なり、そうした意識は水田景観の評価に影響を与えている。水田景観を美しいと評価する人とそうでない人に分類すると、双方の水田景観に対する意識の差が明らかになった。

  • 担当:東北農業試験場・農村計画部・地域計画研究室
  • 連絡:0196-43-3491
  • 部会名:経営
  • 専門:農村計画
  • 分類:行政

背景・ねらい

農業・農村の多面的機能が求められるようになり、農業集落の景観を美しくしようという試みが多くなされている。そこで、農村住民が水田の計画に対してどのような考えを持ち、どのように評価しているかを解明する。

成果の内容・特徴

  • 地域活性化に熱心な農村住民の意識を捉えるために、いわて・むらづくり塾塾生36名を対象に水田景観に対する意識と評価を調べた。具体的には意識を問う質問を16項目用意し、それぞれについて「非常にそう思う」から「そうは思わない」までのいずれに賛意を示すかを連続量として提示し、評価結果を数量的に把握した。また、水田景観の写真を3枚提示し(写真A、B、C)、美しいと思うかどうかを4段階のカテゴリーで把握した。
  • 意識項目の回答について属性ごとに平均値の差の検定を行ったところ、この調査結果においては、年齢では40歳以上が、居住経験では都市生活経験ありが、集落形態では散居居住者が、経済・利便性よりも水田景観の美しさを優先する傾向が認められた(表1)。
  • 水田景観に対する意識と評価を解明するための判別分析を行い、以下の結果を導出した。1小区画圃場では、伝統的な水田景観を好み住民の合意形成を重要と考える人が美しいと感じている。2大区画圃場では、まっすぐな水路や農道を美しいと感じる人、多少不便でも美しい方がよいと考える人が美しいと思う群に分類されている。3山間地圃場では、利便性より景観を優先する人や合意形成を重要とする人は美しいと思う群に、水田景観に興味のない人や直線的な景観を好む人は美しいと思わない群に分類される(表2)。
  • 以上のように、農村住民の水田景観に対する考え方は、属性によって異なるとともに、その意識の差が景観評価に影響を与えていることが明らかになった。特に、大区画圃場の景観が効率面以外で評価されていることが着目される。

成果の活用面・留意点

  • 水田景観の整備に取り組む際の参考になる。
  • 地域の景観づくり活動の際に、住民の景観に対する考え方や評価を把握する一助となる。
  • 今回は地域の活性化に特に熱心な特定の少数グループの農村住民を対象としたため、結果の解釈には十分注意する必要がある。
  • 都市住民による評価を景観整備に取り入れる場合には、意識項目に工夫が必要となる。

具体的データ

写真A、B、C

 

表1.属性別農用地景観の意識の差

 

表2.農用地景観意識による各農用地景観評価の判別分析結果

 

その他

  • 研究課題名:農用地整備における景観評価指標の策定
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~7年)
  • 発表論文等:農用地景観に対する農村住民の意識と評価,東北農業研究,48,305-306,1995