良好な精子の運動性を維持できる馬および鹿の精巣保持方法

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要約

馬ならびに鹿の精巣上体精子の回収において、精巣上体を摘出精巣から分離せずに4~5度で保持すると精巣上体精子の運動性が良好に維持されることが明らかになった。4~5度で24時間の精巣保持が可能である。

  • 担当:東北農試・畜産部・家畜繁殖研
  • 連絡先:019-643-3542
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:繁殖
  • 対象:その他
  • 分類:研究

背景・ねらい

動物遺伝資源保存のために様々な動物種の生殖細胞の保存が進められている。 馬ならびに鹿の生殖細胞の凍結保存法には改良の余地が多いが、中でも凍結保存後の 受精率が優れていることで知られている精巣上体精子の回収に関する知見は あまりない。 従来、精巣上体精子を回収する場合、精子が温度変化に弱いことを考慮して 急激な温度変化を避け、25~37度で摘出精巣を保持しつつ なるべく速やかに回収する方法がとられている。 回収精子の運動性が最も良好となる精巣の保持条件を明らかにするため 精巣摘出から精子回収までの精巣の保持方法(時間・温度)と 回収精子の運動性の関係を検討した。

成果の内容・特徴

  • 摘出馬精巣を4度で保持した場合、保持時間の長短にかかわらず 回収直後の精子の運動性は25度保存より良好である(表1)。 25時間4度で保持した精巣から回収した精子は、8時間培養後も運動性(10+++) が保持されていた。 また長時間(49時間)の保持後も、回収精子の運動性は保持されることが観察された。 凍結・融解後の運動性は4度で保持した精巣から回収した精子が良い傾向にあった。
  • 5度・24時間保持した鹿精巣から回収した精子の回収直後の運動性が 顕著に良好であった(表2)。 供試鹿4頭中2頭(NO.D3.D4)の精子は回収8時間後まで 極めて良好な運動性を保持し続けた。
  • 馬精巣上体精子を摘出精巣から回収する際は、 回収時まで4度で保持することが望ましいことが明らかとなった。 鹿精巣上体精子を回収する場合、 5度で24時間の精巣保持が可能であることが明らかになった。

成果の活用面・留意点

精巣上体を精巣から回収して用いる場合、精巣摘出から精子の回収まで 長時間を要する場合、精巣を低温で保持することで 精子の運動性が保たれることが明らかとなった。 馬と鹿以外にも野生動物の精巣保持に応用できる可能性がある。

具体的データ

表1 馬精巣上体精子の回収後と凍結・融解後の運動性

表2 鹿精巣上体精子の回収後の運動性

その他

  • 研究課題名:馬および鹿精子の保存ならびに受精能獲得技術の開発
  • 予算区分 :経 常
  • 研究期間 :平成6年度~7年度
  • 発表論文等:The effct storage temperature of epididymis on motility of
                      spermatozoa in SIKA DEER and EQUINE. Techniques for Gemate
                      Manipulation and Storage: A saTellite meeting of 13th ICAR
                      conference.(1996) p60