水田雑草ミズアオイにおけるスルホニルウレア系除草剤抵抗性の遺伝様式と他殖による拡散

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要約

スルホニルウレア系除草剤抵抗性ミズアオイは、感受性型に比べて72~112倍の抵抗性を示し、その抵抗性形質は完全優性の1遺伝子によって支配される。本種は10~68%の他殖率(昆虫媒介)を有するため、感受性集団にも拡散する危険性が高い。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0187-66-2771
  • 部会名:水稲
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年北海道・東北各地で出現しているスルホニルウレア系除草剤抵抗性水田雑草の 生物型の適応性と抵抗性の拡散様式を明らかにするために、 ミズアオイを材料にして、 抵抗性形質の遺伝様式と他殖による拡散の様相を検討する。

成果の内容・特徴

  • 抵抗性生物型ミズアオイのベンスルフロンメチル、イマゾスルフロン、 シクロスルファムロンに対する抵抗性は、 同種の感受性型のそれぞれ112、98、72倍であった (表1)。
  • 感受性生物型ミズアオイの自殖後代は全て感受性であったのに対して、 抵抗性生物型の自殖後代及び両型の正逆交配によるF1個体は全て抵抗性であった。 F1個体の自殖によるF2個体は抵抗性と感受性が3:1に分離し、 F1と感受性親の戻し交配個体は1:1に分離した (表2)。 すなわち、異質4倍体であるミズアオイては、 SU剤抵抗性形質が完全優性の1遺伝子によって支配されている。
  • 戸外のミズアオイ実験集団では、 主にセイヨウミツバチが媒介する他殖によって抵抗性形質が花粉とともに 感受性集団に運ばれ、 感受性個体から得られた後代の抵抗性の割合は10~65%となった (表3)。 推定他殖率は 10.4~67.7%である。

成果の活用面・留意点

  • ミズアオイにおけるSU剤抵抗性の遺伝様式と拡散は 本種の抵抗性集団の動態研究に利用できる。
  • 除草剤抵抗性が花粉によっても広がるという情報は、 抵抗性集団が発生する周辺の水田における 雑草防除法策定の際の考慮事項として活用される。
  • アゼナ類やイヌホタルイなど他の草種のSU剤抵抗性の拡散については、 種毎に遺伝様式と繁殖様式の検討が必要である。

具体的データ

表1 スルホニルウレア系除草剤抵抗性ミズアオイの抵抗性程度

表2 抵抗性固体と感受性固体の交配後代における抵抗性形質の分離

表3 抵抗性個体に隣接して生育する感受性個体から得られた後代の抵抗性の割合

その他

  • 研究課題名:除草剤投与下における抵抗性雑草の選択・淘汰と適応進化機構の解明
  • 予算区分 :大型別枠「生態秩序」
  • 研究期間 :平成10年度(平成8~10年)
  • 発表論文等:ミズアオイ Monochoria korsakowii の数種スルホニルウレア系
                      雑草剤に対する反応.雑草研究42巻別号、14-15、1997
                      ミズアオイの実験集団における他殖によるスルホニルウレア系
                      除草剤抵抗性遺伝子の流動,雑草研究43巻別号、42-43、1998.