機能性成分リコペンを多く含む生食用の中間母本「とまと中間母本農10号」

要約

  生食用トマト「とまと中間母本農10号」は、抗酸化作用の高い機能性成分であるリコペンを新鮮重100g当たり7~13 mg 含んでいる。これは現在流通している普通トマトの含量の2~3倍に相当する。高リコペン性は、主に1個の劣性遺伝子に支配されている。

  • キーワード:トマト、リコペン、機能性、生食用、支柱栽培
  • 担当:東北農研・野菜花き部・野菜花き育種研究室
  • 連絡先:電話 019-643-3414、電子メール syui@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・野菜花き(野菜)、野菜茶業・野菜育種
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

カロテノイド色素の一種であるリコペンは抗酸化作用が強く、機能性成分として注目を集めている。トマトにはこの物質が多く含まれているが、日本で用いられている生食用トマト品種はリコペン含量が比較的低く、これを高めた支柱栽培向き生食用トマトが求められている。

成果の内容・特徴

  • 1993年に「桃太郎」の自殖後代「Mo16411」と高リコペン遺伝子を有する「Manapal」とを交配し、リコペン含量と他の実用形質に着目して選抜を行った結果、2000年に「とまと中間母本農10号」を育成した(図1)。2001年から3年間、特性検定試験を実施した結果、高リコペン性が確認され、実用形質についても一定の評価が得られている。
  • 生食用トマト品種「桃太郎」のリコペン含量が新鮮重100g当たり 5.2 mg であるのに対して、「とまと中間母本農10号」は 13.8 mg であり、2倍以上の高い含量を示す。また、この値は育成親に用いた「Mo16411」および「Manapal」より高い(図2)。
  • F2世代における分離より、「とまと中間母本農10号」の持つ高リコペン性は主に1個の劣性遺伝子に支配されると推定される。また、F1のリコペン含量が期待されるより高いことなどから、微動遺伝子の関与も推定される。(表1)
  • 「とまと中間母本農10号」は、「桃太郎」と比較すると、収穫開始はやや遅く、収量はやや少なく平均果重はやや小さい。果実は硬く、裂果がやや多い。糖度はやや低い(表2)。また、育成親の「Manapal」と比較すると、収量と糖度は高く、空洞は少ない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 支柱栽培の生食用トマト品種のリコペン含量を向上させる育種素材に利用できる。
  • 高リコペン性を支配する遺伝子は劣性であるため、F1品種の親に用いる場合は両親にこの遺伝子を保有させる必要がある。
  • 熟期はやや晩生で、茎葉がやや折れやすいので注意が必要である。
  • 萎凋病レース1に対して安定した抵抗性を持つが、萎凋病レース2と半身萎凋病に対しては、抵抗性を持たない。TMVによるウイルス病抵抗性に関しては、両親と同様に抵抗性遺伝子を保有していない。

具体的データ

図1.とまと中間母本農10号と桃太郎の写真

 

図2.「とまと中間母本農10号」のリコペン含量

 

表1.「とまと中間母本農10号」のリコペン含量の遺伝(2003年秋作)

 

表2.「とまと中間母本農10号」の特性(2002年と2003年の平均)

 

その他

  • 研究課題名:トマトにおけるカロチノイド色素の遺伝変異
    トマトの高カロチノイド品種の育成
    高リコペントマト系統の育成と栽培条件等による変動要因の解明
  • 課題ID:05-04-02-03-18-03
  • 予算区分:新需要創出、国産野菜、ブラ日6系
  • 研究期間:1991~2003年度
  • 研究担当者:石井孝典、由比 進、藤野雅丈、矢ノ口幸夫、片岡 園、石内傳治、内海敏子、沖村 誠、川頭洋一、松永 啓
  • 発表論文等:石井ら(1999) 東北農業研究 52:205-206.