根の低温が寒締めホウレンソウの糖度を上昇させる

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要約

低温下でホウレンソウの糖度が上昇する効果、いわゆる「寒締め」効果は、根が低温に曝されることにより発現し、気温の直接的な作用は小さい。

  • キーワード:ホウレンソウ、寒締め、低温、根、糖度
  • 担当:東北農研・地域基盤研究部・連携研究第2チーム、農業気象研究室
  • 連絡先:電話019-643-3462、電子メールmok@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生産環境、共通基盤・農業気象
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

冬の寒さを利用してホウレンソウ、コマツナなど葉菜類の糖度や栄養価を高める栽培法、いわゆる「寒締め栽培」が東北地域を中心に急速に普及している。しかし寒締め効果は気象やハウスの環境管理に大きく左右されるため、品質を安定化する技術と栽培指針の確立が、生産者および消費者の双方から要望されている。寒締め効果が発現するメカニズムを解明し、ハウス環境の適切な管理法の確立と糖度変化の定量的な評価に資する。

成果の内容・特徴

寒締め効果が起こらない温度域(平均気温:15-25℃)でホウレンソウを栽培し、一定の大きさに達した時点で、高温あるいは低温ハウス内に持ち込み、恒温槽を用いて地温を制御した。

  • 気温25℃の高温条件でも、地温が低いと糖度(Brix)が上昇する(図1)。
  • 寒締めが十分可能な気温4℃の低温条件でも、地温が高いと糖度が上昇しない(図2)。
  • 従って、気温の高低にかかわらず、地温が低下しないと糖度は上昇しない。
  • 地温が9℃前後を境にして、低温による根の吸水量の減少が顕著に現れる(図3)。
  • 地温低下に伴って気孔コンダクタンスが減少し、糖度と気孔コンダクタンスの間には高い負の相関が認められる(図4)。
  • 以上のことから、低温に対する適応が、根の吸水抑制によって引き起こされ、その結果、地上部に糖を蓄積し、寒締め効果が発現すると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 寒締め効果を十分に発揮するためには、気温ではなく地温のモニタリングとその低下に主眼を置いた環境管理が重要である。寒締めのためにハウスを開放し気温が低下しても、10~20cmの地温が低下するまでには最低2週間を要する。とくに出荷シーズンの初期には、このことを踏まえて、十分に長い期間低温に曝す必要がある。
  • 本研究では、ホウレンソウ品種「まほろば」(冬期)と「プリウス」(夏期)を用いた。他の作物や品種でも同様の現象が起こると考えられるが、低温の程度には作物・品種間差があることを考慮する必要がある。
  • 本研究の成果は、作物の耐凍性獲得メカニズムの解明にも有用である。

具体的データ

図1.地温処理に伴う1週間後の糖度変化 図2.地温処理に伴う1週間後の糖度変化

 

図3.地温変化に伴う吸収量の経時変化 図4.気孔コンダクタンスと糖度との関係

その他

  • 研究課題名:寒締め野菜の高品質化シナリオの策定と生産支援システムの開発
  • 課題ID:05-08-02-01-10-04
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:岡田益己、井上めぐる、村井麻理