大規模洋菓子店との直接取引による夏秋どりイチゴの販売推進策

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要約

生産者組織が大規模洋菓子店との夏秋どりイチゴの直接取引を推進するには、単に外国産に比べて良質果であるだけでなく、他の洋菓子店との商品差別化を実現するような、品種や食味等で特徴をもたせた高品質果の供給が必要である。

  • キーワード:夏秋どりイチゴ、生産者組織、大規模洋菓子店、直接取引、高品質果
  • 担当:東北農研・東北地域活性化研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3493
  • 区分:東北農業・野菜花き、東北農業・基盤技術(経営)、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

現在、夏秋期(8、9月)のイチゴの実需者である洋菓子業界では、大規模店(従業員20人以上)の洋菓子出荷額が全体の95%を 占めている。一方、夏秋期の国産イチゴの主流である四季成り性品種では、民間育成品種を中心に種苗会社による契約取引が行われている。これはあらかじめ販 売先が確保された取引形態であることから、販売上の制約を伴いつつも四季成り性品種の普及を促す要因となってきた。こうしたなか、近年、国産の高品質イチ ゴへのニーズを背景に、有利販売を目指す生産者の中に直接取引を模索する動きがある。しかし、洋菓子店にとって直接取引は、流通業者との取引に比べリスク と負担が大きいため、取引関係で優位に立つ大規模店は直接取引を避ける傾向が強く、大口取引の阻害要因となっている。そこで、大規模店を対象とする夏秋ど りイチゴ新品種の販売戦略として直接取引に着目し、その推進策を需要実態から解明する。

成果の内容・特徴

  • 現在、直接取引を行う大規模店(表1)では仕入チャネルごとにイチゴを使い分けており、その利用法から店は二つの類型に分けられる(図1)。 A.一つのレギュラー商品の中でサンド用と飾り用に使い分ける店(Q店、R店)、B.低価格のレギュラー商品と高価格の差別化商品に使い分ける店(S店) である。A類型の店は、店の信用保持のため顧客への安定的な商品の提供を重視しているが、B類型の店は、店のアピール力を高めるため独自性のある商品の提 供を重視している。
  • A類型の店では外国産との比較で国産を選択している。しかし、品種や産地等まではこだわっていない。そこでは、直接取引の仕入チャネル(図1のc)は国産品の補充ルートとなっており、市場の安定供給機能を補完している。しかし、直接取引は店のリスクと負担が大きいため、流通業者による安定供給が可能ならば業者を介したチャネルに移行される可能性が高い(図2)。
  • B類型の店では、甘みと酸味のバランスのとれた、とりわけ洋菓子に合う味を持つ国産の品種として「雷峰」を選び、年間を通し て仕入れ、品種名を冠して菓子を販売している。こうした特徴あるイチゴは差別化商品に利用できる高品質素材として選択されており、直接取引が素材の調達 ルートとなっている。そこでは、国産品の安定的調達ではなく生産者組織の供給するイチゴの特徴や品質が重視されているため、直接取引に伴うリスクと負担に もかかわらず、他のチャネルに代替される可能性は低い。このように直接取引の推進には、品種や食味に特徴ある高品質果の供給が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 生産者が大規模洋菓子店との直接取引を行う際の販売戦略として活用できる。
  • 生産者が洋菓子店の需要に合うロットを供給できることが継続的取引の前提であるが、需要量は店の商品構成により異なるため、生産量に見合う取引先の開拓が不可欠である。
  • 直接取引を行う場合に洋菓子店が負うリスクと負担は、欠品のリスクやイチゴの納品までのリードタイムにおける商品の売り逃しリスク、冬春期の取引継続の負担である。

具体的データ

表1 調査対象大規模店における夏秋期の国産イチゴの仕入状況

 

図1 夏秋期におけるイチゴの仕入れチャネルと利用法による大規模店の類型

 

図2 大規模店におけるイチゴ利用法からみた直接取引の特徴

 

その他

  • 研究課題名:寒冷・冷涼気候を利用した夏秋どりイチゴ等施設野菜の生産技術の確立
  • 課題ID:213-b
  • 予算区分:交付金プロ(寒冷地イチゴ)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:澁谷美紀
  • 発表論文等:澁谷(2007)東北農研センター公開シンポジウム資料「東北地域における夏秋どりイチゴ栽培技術の普及に向けて」:21-26