イネの根及び葉身におけるアクアポリンの組織局在性

要約

イネのアクアポリンはその種類により異なる組織に局在する。根では、水輸送において最も抵抗の大きい内皮や外皮に多くの種類のアクアポリンが存在している。葉身では主に葉肉細胞にアクアポリンが局在している。

  • キーワード:イネ、アクアポリン、水輸送、根、葉身、組織局在性
  • 担当:東北農研・寒冷地温暖化研究チーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3462
  • 区分:東北農業・基盤技術(農業気象)、共通基盤・農業気象
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

寒冷地の水稲作では、低温による生育不良や吸水障害がしばしば発生する。水を通す膜タンパク質アクアポリンが作物の生育や吸水に対して果たす役割が解明されつつあり、アクアポリンをターゲットとした分子育種を行う等の応用的手法によりイネにおける低温障害回避技術の飛躍的進歩が期待される。平成20年度成果情報にてイネに33種類のアクアポリンが存在し、その中から根及び葉身で発現するアクアポリンの種類を明らかにしたが、それらが根や葉身のどの部位に局在しているのかは未解明である。そこでイネアクアポリンの抗体を用いて根や葉身の組織内での局在性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 根で多く発現するアクアポリンの抗体7種類を用いて根の横断切片を染色すると、全てのアクアポリン抗体について根の様々な組織での局在が見られるが、種類により局在する部位が異なる(図1a)。
  • OsPIP1型(イネの3種類のOsPIP1型アクアポリン全てを認識する抗体を使用)は内皮に特異的に局在している。OsPIP2;1、OsPIP2;3、OsPIP2;5は根の様々な組織に局在しているが、いずれも内皮に最も強い局在を示す。OsPIP2;3は中心柱付近にも多く局在する。OsTIP1;1は外皮や厚膜組織といった根の外側の部分に、OsTIP2;1は内皮と中心柱に、またOsTIP2;2は中心柱に多く局在している。それぞれのアクアポリンが局在する組織で水輸送に関与していると考えられる。
  • 内皮にはOsPIP1型、OsPIP2;1、OsPIP2;3、OsPIP2;5、OsTIP2;1また外皮にはOsPIP2;1、OsPIP2;3、OsPIP2;5、OsTIP1;1等の複数のアクアポリンのメンバーが局在することにより、これらの組織で細胞横断型のシンプラスト経路(図1b)、さらに根全体の水輸送に関与していると考えられる。
  • 葉身で多く発現するOsPIP1型及びOsPIP2;1の抗体を用いて葉身の横断切片を染色すると、葉肉細胞での強い局在が観察される(図2)。これらのアクアポリンが葉肉細胞の水ポテンシャルの維持に関与している可能性が示唆される。

成果の活用面・留意点

  • イネアクアポリンの抗体は、各アクアポリンのN末あるいはC末側の特徴的なアミノ酸配列をもとに設計した抗ペプチド抗体であり、他のアクアポリンメンバーを認識しないことを確認している。抗体は名古屋大学生命農学研究科より分譲された。
  • 本研究結果は、各アクアポリンがそれぞれ局在する箇所で水透過に寄与している可能性を強く示唆しているが、実際のイネ体内での機能を検証するためには別途検討が必要である。

具体的データ

図1 根におけるアクアポリンの局在性

図2 葉身におけるアクアポリンの局在性

その他

  • 研究課題名:寒冷地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 中課題整理番号:215a.2
  • 予算区分:科研費、イノベーション創出
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:櫻井淳子、村井麻理、アハメードアリファ、前島正義(名古屋大生命農)、上村松生(岩手大連大)
  • 発表論文等:Sakurai et al. (2008) Plant and Cell Physiology, 49(1): 30-39