ダイズ茎疫病菌の簡便な遊走子懸濁液調製法

要約

ダイズ茎疫病菌を野菜ジュース寒天培地で25°C・7~8日間培養し、蒸留水を満たして若い菌糸形成を誘導した後に1回だけ水交換することにより遊走子懸濁液を調製できる。

  • キーワード:ダイズ茎疫病菌、Phytophthora、遊走子
  • 担当:東北農研・大豆生理研究東北サブチーム
  • 代表連絡先:電話019-643-3524
  • 区分:東北農業・基盤技術(病害虫)、共通基盤・病害虫、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ダイズ茎疫病菌Phytophthora sojaeの遊走子懸濁液を調製するには、寒天培地で培養した菌叢を蒸留水で満たし、1時間ごとに数回水交換するEyeらの方法が用いられている。この水交換は培地中の糖質濃度を下げて遊走子嚢の形成を促進するために行われているが、水交換を数回行うため手間がかかり、より簡便な方法が望まれている。そこで、本研究では必要最低限の養分量の培地を用いて注水と水交換の時期を変えることにより、1回だけの水交換による遊走子懸濁液の調製法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 糖質濃度の低い無塩の野菜ジュースに、炭酸カルシウム15g/Lを加えてよく攪拌し、300~600Gで1分遠心して上清を得る。上清を8~15倍に希釈して1.8%の寒天を加えて培地とする。深型シャーレ(径90×20mm)に10~15mLの培地を注いで厚さの薄い寒天培地を作る。これにより1つのシャーレで培養から遊走子形成誘導まで行える。
  • 寒天培地中央に菌を移植して25°Cで培養し、菌糸がシャーレ内壁に到達する7~8日後に30mLの蒸留水を注ぎ、2日程待って水中に菌糸が伸びてきてから、水を交換すると安定して大量の遊走子が得られる(表1)。
  • 遊走子濃度は水を交換してから7~10時間後にピークとなり、24時間後にはその半分以下に漸減する(図1)。得られる遊走子の濃度と発生消長は既知の方法で形成誘導した場合と同等であり、感染力も問題ない。

成果の活用面・留意点

  • 野菜ジュースはトマトベースの野菜ジュースなら恐らくどの製品でも利用可能。食塩無添加で糖質濃度が40~50g/L(エネルギーでは200~300kcal/L)程度の製品が扱いやすい。
  • 菌株や野菜ジュースの種類によって遊走子の形成条件が若干変わる。水中菌糸が密生して遊走子嚢が作られないときは蒸留水を満たす時期を遅らせたり培地を薄める。逆に水中菌糸の伸びが悪いときは蒸留水を満たす時期を早くしたり培地を濃くする。

具体的データ

表1 水を満たすまで日数と水交換まで時間を変えたときの遊走子濃度

図1 遊走子濃度の経時的変化

その他

  • 研究課題名:大豆の湿害耐性等重要形質の改良のための生理の解明
  • 中課題整理番号:221b
  • 予算区分:委託プロ(新農業展開)、基盤
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:山本亮、酒井淳一、島村聡、中村卓司、森脇丈治、兼松誠司、小松節子