Googleマップによる気象予測データを用いた水稲栽培管理警戒情報システム

要約

東北地方のユーザーを対象にして、圃場位置、品種、移植日に対応した水稲の生育、高温障害、冷害、病害発生予測の情報をGoogleマップまたは携帯端末で提供できる。このシステムは気象被害軽減のための栽培管理や薬剤散布の意志決定に役立つ。

  • キーワード:Googleマップ、水稲、気象予測データ、気象被害、生育予測、病害発生予測
  • 担当:
  • 代表連絡先:019-643-3465
  • 研究所名:東北農業研究センター・やませ気象変動研究チーム
  • 分類:普及成果情報(2010)

背景・ねらい

東北地方では、近年夏季天候の年次変動が大きくなっており、気象被害の危険性が高まっている。そこで、気象予測データを利用して、ユーザー圃場の栽培品種や作業履歴に対応した1週間先までの水稲生育予測、気象被害予測、病害発生予測が可能なシステムを開発する。これらの情報を多くのユーザーに利用されていて操作が容易なパソコンのGoogleマップまたは携帯端末で提供し、ユーザー圃場に気象被害等の発生が予測された場合は警戒情報メールを自動発信して対策の実施を促す。

成果の内容・特徴

  • Googleマップからユーザー圃場をクリックして、品種(東北地方主要12品種)、移植日、移植日の葉齢を入力することにより、ユーザー圃場に対応した1週間先までの生育を予測する(図1)。また、湛水直播栽培の生育予測も同様にできる。1ユーザー当たり5圃場の設定が登録可能である。
  • 生育予測情報からユーザー圃場の冷害および高温障害危険期を推定して、1週間先の冷害および高温障害危険度を予測する(図2)。
  • イネいもち病発生予察システム(BLASTAM)を用いて、5日後までの感染好適条件を予測する(図3)。また、イネ紋枯病発生予察システム(BLIGHTAS)を用いて、現在までの病斑高率および発病株率を予測する。
  • Googleマップ上からの情報に加えて携帯端末からも情報を確認できるため、農作業の合間に圃場からでも利用可能である(図4)。
  • ユーザー圃場に冷害、高温障害および病害発生の危険性が予測されたときは、警戒情報メールを自動配信して、圃場の調査および対策を促す。
  • ユーザーは、パソコンおよび携帯端末から圃場の様子、警戒情報に対する対策、システムへの質問等をシステム管理者へ送信できる。また、ユーザー間の情報交換も可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:水稲生産者、農業技術指導者等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北地方の水田で利用可能。2011年度は、水稲生産者、JA、県農業関係者など約200名のユーザー登録があった。
  • その他:利用圃場における適合度を常時観察して利用すること。
    本システムの使用には、ユーザー登録が必要である。ユーザー登録画面(http://map2.wat.soft.iwate-pu.ac.jp/narct2010/newaccount/)から利用規約に同意して、氏名、住所、メールアドレス等を入力すると、IDとパスワードが発行される。初期画面(http://map2.wat.soft.iwate-pu.ac.jp/narct2010/log/)にIDとパスワードを入力すると使用できる。使用は無料で、4-10月の稲作期に運用する。
    気象被害等の対策技術は、各県の稲作技術情報、病害虫発生予察情報または水稲冷害早期警戒情報(http://www.reigai.affrc.go.jp/cgi-bin/reigai.cgi)を参考にする。

具体的データ

図1 パソコンからのトップ画面図2 高温障害発生予測モデルの結果
図3 イネいもち病発生予察システム(BLASTAM)の結果図4 携帯端末からトップ画面

(小林隆)

その他

  • 中課題名:やませ等気象変動による主要作物の生育予測・気象被害軽減技術の高度化と冷涼気候利用技術の開発
  • 中課題番号:215b
  • 予算区分: 交付金プロ(Google被害軽減システム)
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:小林隆、菅野洋光、神田英司、南野謙一(岩手県大ソフトウェア情報)、Prima O. D. A. (岩手県大ソフトウェア情報)、浅野真澄(宮城古川農試)、大場淳司(宮城古川農試)、藤井弘志(山形大農)、早坂剛(山形農総研)、吉永悟志