チゼル有芯部分耕を活用した大豆の狭畦栽培

要約

チゼル有芯部分耕による大豆の狭畦栽培は、1.2~2.0km/hで播種が可能で、作物が土壌表面を被覆することで雑草の繁茂を抑えることができる。疎播で倒伏程度が小さく、最下着莢節位が高くなり、収穫作業を良好に行え、慣行栽培と同等の収量が得られる。

  • キーワード:チゼル有芯部分耕、水田転換畑、大豆、狭畦栽培
  • 担当:新世代水田輪作・高能率水田輪作
  • 代表連絡先:電話029-838-3535
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

有芯部分耕は水田転換畑での大豆低収の原因である湿害や乾燥害を軽減する技術である。有芯部分耕の作業速度を改善したチゼル有芯部分耕は不耕起部分および播種条間を通常の有芯部分耕より狭めることが可能である。大豆の狭畦栽培では中耕・培土作業が不要になり、労働時間の削減が期待できる。そこで、水田転換畑において、チゼル有芯部分耕を活用して狭畦栽培による大豆の省力安定生産を実証し、その作業性と大豆の生育収量に与える影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • チゼル有芯部分耕による狭畦播種は前作後の不耕起状態の圃場で行う。播種条間は慣行の播種条間の半分とし、チゼルは播種条間の中央に配置する。ロータリ耕は浅耕とし、チゼル耕深はロータリ耕より10cm深くする(図1)。
  • 狭畦播種は、播種密度に関わらず、茎葉が土壌表面を標畦播種に比べて早く被覆することで群落下における受光量が低下し(データ省略)、雑草の繁茂を抑えることできる(図2)。
  • 狭畦栽培では、疎播(12.7本/m2)することで、標播(16.7本/m2)と比べて倒伏程度が減少、莢数が増加し、慣行栽培(標畦・標播)と同等の収量が得られる(表1)。
  • チゼル有芯部分耕による狭畦栽培では、慣行栽培に比べ最下着莢位置が高くなり、コンバインによる収穫ロスが発生し難くなる(表1)。
  • チゼル有芯部分耕は、1.2~2.0km/hで作業可能である(表2)。慣行栽培と比べて播種の作業速度は遅いが、慣行栽培で行われる播種前の事前耕起および栽培期間中の中耕培土は行わないため、栽培期間全体でみると作業の省力化が図れる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果に用いた作業機の設定は2009年成果情報(技術・参考)「ロータリ耕とチゼル耕を組み合わせた高速型有芯部分耕方式」に準ずる。
    (https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2009/tohoku09-14.html)
  • 前作の残渣が播種機の障害にならず、充分な砕土率が確保できるようにロータリ耕の耕深、作業速度を調整する。
  • 有芯部分耕の排水効果を高めるために、慣行と同様に暗渠排水の他に額縁明渠を施工する。
  • 秋田県内の2つの現地生産法人で水稲後の水田転換畑において、品種「リュウホウ」を6月中旬播種の普通期栽培で実施した成果である。

具体的データ

その他

  • 中課題名:作業の高速化による高能率低投入水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:111b1
  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2012~2015年度
  • 研究担当者:齋藤秀文、片山勝之、高橋智紀、持田秀之、野中章久
  • 発表論文等:
    1)片山ら (2016) 日作紀、85:204-210
    2)片山、齋藤(2014)日作東北支部会報、57:63-64