四季成り性イチゴの連続開花性の強弱と日長処理による花成誘導効果

要約

連続開花性の異なる四季成り性イチゴ品種に日長処理を行うと、連続性の強弱により花成反応の程度は異なり、自然日長では花芽分化しにくい品種は日長処理による花成反応が顕著で花成制御が期待できる。

  • キーワード:四季成り性イチゴ、連続開花性、日長処理、出蕾株率、出蕾花房数
  • 担当:日本型施設園芸・イチゴ等野菜周年生産
  • 代表連絡先:電話0942-43-8430
  • 研究所名:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

長日処理は四季成り性イチゴの花成を促進し、花房の発生が停滞しやすい夏期の花成制御技術として期待されているが、花成誘導に必要な処理期間に関しての情報はあまりない。また、栽培期間中の四季成り性イチゴの花房の発生間隔の長短(連続開花性の強弱)は品種により異なり、日長に対する反応にも差があることが予想される。そこで、出蕾に対する日長時間、処理期間および連続開花性との関係を調べ、四季成り性イチゴの日長処理による花成制御技術開発の基礎的知見とする。

成果の内容・特徴

  • 24時間日長処理1週間で供試したすべての品種で出蕾株率が100%となる(表1)。
  • 自然日長区に対して花房数が増加するのに必要な処理期間は24時間日長は16時間より短く、また供試品種の中では「なつあかり」が最も短い(表1)。
  • 連続開花性が強い「とちひとみ」では出蕾株率、出蕾花房数について自然日長区との間にほとんど差が見られない(表1)。
  • 連続開花性が弱い「なつあかり」は12時間日長処理および自然日長区の出蕾株率が他品種と比べて顕著に低い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 2013年に東北農業研究センター(盛岡市)で行った着果のない条件での成果である。日長処理期間中の日平均気温は20~27℃で、四季成り性イチゴが量的長日性(日長によらず花芽分化可能であるが長日条件で促進される)を示す中温域から質的長日性(限界日長以下では花芽分化しない)を示す高温域に該当する(図1)。処理日長が16時間以上は自然日長より長日条件、12時間は短日条件である。
  • 連続開花性が中程度~弱い四季成り性イチゴの花成制御を行う場合の基礎的な情報となる。
  • 長日処理には白熱灯を用いる。市販の電照用白熱灯60W8灯を1.2m×10mの範囲に、株元から1.3~1.4mの高さに吊して放射照度(400nm~1050nm)約3W/m2である。他の光源の効果は未確認であり、十分な効果が得られない可能性がある。

具体的データ

その他

  • 中課題名:イチゴ等施設野菜の周年多収生産システムの開発
  • 中課題整理番号:141d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:濱野惠、山崎浩道、矢野孝喜、森下昌三
  • 発表論文等:Hamano M. et al. (2015) J. Hort. Sci. Biotech. 90:157-163