ニンジンに含まれるα-カロテンとβ-カロテンの簡易分別定量法

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要約

ニンジン根アセトン抽出液の443 nm, 475 nm, 492 nmの吸光度からα-カロテンとβ-カロテン濃度を簡易・迅速に精度良く求めることができる。

  • キーワード:ニンジン、ビタミンA、簡易分別定量法、吸収スペクトル
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム
  • 連絡先:電話059-268-4635、電子メールmasayasu.nagata@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・野菜品質・機能性
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ニンジンには、主なカロテノイド色素としてα-カロテンとβ-カロテンが含まれている。α-カロテンのビタミンA効力はβ-カロテンの半分であり、ニンジンの栄養性を評価するためには両成分を分別して定量する必要がある。α-カロテンとβ-カロテンの分別定量には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられ、分析には1点あたり20~40分の時間を要する。そこで、流通や栽培、育種の場面で簡易に利用可能なα-カロテンとβ-カロテンの簡易分別定量法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本法は、ニンジンのアセトン抽出液をα-カロテンとβ-カロテンの2成分系として取り扱い、実際のHPLC分析値との差を一次回帰式で補正し、得られた計算式により各濃度を求めるものである。
  • 分析試料は、HPLC分析と同じ、ニンジン3gをアセトンで繰り返し抽出し、100mLに定容した遠心上清液である。
  • α-カロテンとβ-カロテンは、異なる可視吸収スペクトルを示す(図1)。標準試料の吸光度の差が極大・極小あるいは同じになる波長と、その時の吸収係数(E1%1cm)を表1に示す。各波長における吸光度は、α-カロテンとβ-カロテンの濃度にそれぞれの吸収係数を掛けた数値の合計となることから、連立方程式を変形して、吸光度から各色素の濃度を求める式を導くことができる。
  • ニンジン(品種'黒田五寸','向陽二号','秀紅','ベーターリッチ')のアセトン抽出液のHPLC分析値(n=53)との相関性を解析して、その差を1次回帰式で補正する。
  • α-カロテンとβ-カロテンの合計濃度は、475 nmの吸光度から高い精度で(r=0.988)算出される(式1、図2左)。β-カロテンの濃度は、443 nmと492 nmの吸光度から良い精度で(r=0.939)算出される(式2、図2中央)。α-カロテンの濃度は、443 nm, 475 nm, 492 nmの吸光度から良い精度で(r=0.929)算出される(式3、図2右)。
  • この分析には、吸収スペクトルあるいは多波長の吸光度が測定できる一般的な分光光度計を用いる。吸光度の測定から計算までを含めて1点あたり数分以内に分析が完了する。

成果の活用面・留意点

  • 本法は、含まれる主な色素がα-カロテンとβ-カロテンである普通種ニンジンに対して有効である。リコペンが含まれている金時ニンジンには適用できない。

具体的データ

図1 α-カロテンとβ-カロテン(1 %, 1 cm)の可視吸収スペクトルおよびその差スペクトル

表1 α-カロテンとβ-カロテンの吸収係数

式1~式3

図2 総カロテノイド(左)、β-カロテン(中央)、α-カロテン(右)の計算値とHPLC 分析値の散布図

その他

  • 研究課題名:野菜・茶の食味食感評価法の高度化と高品質流通技術の開発
  • 課題ID:311-g
  • 予算区分:ブラニチ6系
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:永田雅靖、野口裕司、今西俊介、伊藤秀和、杉山慶太