茶園の害虫発生予測やチャ生育予測のための有効積算温度表示器

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要約

本装置は茶園の気温を計測し、任意に設定した3段階の有効積算温度に達するとLED点滅で報知する。害虫防除適期の把握、作物生育予測などに利用できる。

  • キーワード:積算温度、装置、害虫発生予測、作物生育予測、チャ
  • 担当:野菜茶研・茶生産省力技術研究チーム
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

有効積算温度は、作物生産に利用可能な地域の温度資源量を表すためや、作物や昆虫の発育相の進展を予測するために用いられてい る。茶栽培では、クワシロカイガラムシの防除適期予測や一番茶開葉数の予測等に用いられている。有効積算温度を取得するにはアメダスデータを利用して推定 する方法などがあるが、個々の茶園での利用は、気温計測とデータ処理が必要で作業性や実用性が高いとはいえない。そこで、茶園において有効積算温度を計 測・表示し、チャ害虫の発育相や一番茶開葉数を容易に把握できる装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本装置は、計測、記録、表示等をする本体と温度センサ(自然通風放射除け内)で構成されている(図1)。本体の液晶画面に現在の日時、気温、有効積算温度が表示できる。また、LEDの点滅により有効積算温度域を容易に把握できる。
  • 毎正時の気温によって計算した積算値({毎正時の気温-基準温度}÷24)により有効積算温度(日度)を1時間毎に記録し表 示する。有効積算温度の記録は2回路用意され、それぞれの回路で起算開始日、基準温度、3段階の警報積算温度を任意に設定できるため、害虫用と作物用な ど、1台で2つの用途に対応した有効積算温度を表示できる。設定した警報積算温度に達した日を過去5年分記録・参照できるため、有効積算温度推移の早晩を 比較できる。有効積算温度の計測は999.9日度まで計測できる。鉛蓄電池と充電用太陽電池の組合せにより、電源のない場所に設置できる(表1)。
  • 設定された3段階の警報積算温度に達すると低い方からそれぞれ緑、黄、赤のLEDが点滅するため、有効積算温度がどの段階に 達したかを容易に把握できる。クワシロカイガラムシ第1世代虫(起算開始日1月1日、基準温度10.5℃)では、ふ化始め(250日度)、ふ化盛期直前 (280日度)、ふ化終期(310日度)等の表示が可能であり、防除適期の把握に利用できる。
  • LEDの点滅により有効積算温度の程度を確認できるため、計測中の操作は不要である。設定およびデータ読出しは表示切替ボタンおよび設定 用ボタンによって行う。表示切替ボタンで液晶表示を現在データ、読出しデータ、設定データに切り替える。読出しデータ画面ではデータの消去や修正ができ る。設定データ画面では起算開始日、基準温度、3段階の警報積算温度を設定する(図2)。
  • 本装置で得られた有効積算温度は検定済み白金測温体で計測した温度データから求めた値とほぼ等しく推移し、生育予測などに利用可能である(図3)。気温の計測精度は、センサの校正曲線を用いて補正し二乗平均平方根誤差(RMSE)が0.24℃(温度範囲0~35℃)となる。

成果の活用面・留意点

  • 温度センサは放射の影響が少なく風通しの良い場所に設置する。
  • 防除適期の把握に利用する場合には、警報表示のみで判断せず、害虫の発育状態を観察して確認する。
  • 本装置は、フルタ電機株式会社から市販されている。

具体的データ

図1 装置の外観 表1 有効積算温度表示器の仕様

 

図2 表示イメージと操作の手順 図3 有効積算温度の推移(2007年)

その他

  • 研究課題名:生体情報及び高度センシング技術による茶の省力栽培・加工技術の開発
  • 課題ID:223-b
  • 予算区分:交付金プロ(精密畑作)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:荒木琢也、深山大介、角川修、宮崎昌宏、武田光能、佐藤安志、荒木慎介(フルタ電機株式会社)