味覚センサーによる緑茶の客観的うま味評価法

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要約

ポリビニルポリピロリドン(PVPP)で処理を行いポリフェノールを除去した緑茶浸出液試料を味覚センサー装置で測定することにより、緑茶のうま味強度を6段階に格付けし客観的に評価することができる。

  • キーワード:味覚センサー、緑茶、うま味、客観的評価、ポリビニルポリピロリドン
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4982
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

食品の品質及び安全性や健康に対する関心の高まりを受けて、生産者・業界・消費者から、茶においても品質表示制度の確立が強く望まれている。そこで、緑茶の規格設定・品質表示制度の策定を指向した客観的品質評価法を開発するために、味覚センサー装置を用いた緑茶のうま味強度の実用的な格付け方法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 味覚センサー装置(インテリジェントセンサーテクノロジー(INSENT)社製味認識装置SA402B型)のうま味センサープローブ(SB2AEE型)は、緑茶浸出液中のポリフェノール(カテキン類等)にも応答する。したがって、この装置を用いて緑茶のうま味強度を測定する場合には、PVPPを用いてポリフェノールを除去する必要がある。
  • 緑茶浸出液は、樹脂製フィルター付きガラス製ポット(セレック社製GAV-2)を用いて、茶葉2.00 gを沸騰水200 mLで5分間浸出させることにより調製する。ポリフェノールの除去は、この緑茶浸出液試料100 mLに対しPVPP 2.00 gを加え、25°Cで1時間処理することによって行う。
  • 緑茶のうま味測定は、図1に示した手順により行われる。味覚センサーによる測定温度は25°Cである。
  • 5.00 mMグルタミン酸ナトリウム(MSG)水溶液(30 mM塩化カリウム(KCl)と0.30 mM酒石酸を含む)のセンサー出力値をうま味強度の基準点とする。
  • うま味強度は、センサー出力値(電位差)をうま味推定値に換算して表示される。うま味推定値は、Weberの法則及びWeber-Fechnerの法則を根拠に、ヒトがうま味強度の差異を認識できると推定される最小の強度差を一目盛とする数値(本法の場合、一目盛りは20%濃度差のMSG水溶液のセンサー出力差に相当)である。各試料のうま味推定値は、5.00 mMと2.00 mMのMSG水溶液(共に30 mM KClと0.30 mM酒石酸を含む)のセンサー出力値を使用して、式1に従い算出される。
  • うま味推定値は、ヒトの官能試験による順位づけと正の相関がある(図2)。
  • 緑茶のうま味強度は、うま味推定値により6段階に格付けできる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本法は高い室内再現性を有する(うま味推定値の相対標準偏差は同一測定日内で0.39、異なった測定日間では0.50)。
  • 図3にはレベル1およびレベル6に格付けされるサンプルは示されていないが、アミノ酸含有量の少ない原葉から製造された茶やうま味物質を添加された茶などは、それぞれレベル1とレベル6に格付けされる可能性がある。
  • 渋味評価法(平成18年度野菜茶業研究成果情報)と組み合わせることで、一層細やかな緑茶の味評価が可能となる。

具体的データ

図1 味覚センサー装置による測定手順

図2 緑茶浸出液におけるうま味推定値とヒトの官能との関係 官能試験は、ポリフェノールを除いていない試料を用い、9人のパネリストによって実施

式1 うま味推定値の算出方法

図3 味覚センサー装置による緑茶111試料のうま味評価例種々の値段帯における普通蒸茶、深蒸茶、玉露、かぶせ茶、芽茶、番茶、釜炒茶を含む

その他

  • 研究課題名:野菜・茶の食味食感評価法の高度化と高品質流通技術の開発
  • 課題ID:311-g
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:林宣之、氏原ともみ、池崎秀和(INSENT)、陳栄剛(INSENT)
  • 発表論文等:Hayashi et al. (2008) J. Agric. Food Chem. 56: 7384-7387.