トマトのハイワイヤー誘引栽培における基部側枝葉による果実糖度の向上

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要約

トマトのハイワイヤー誘引栽培では、基部の強勢な側枝1本を5葉程度で摘心して残すことにより、収量を低下させずに果実糖度を高めることができる。

  • キーワード:糖度、基部側枝、トマト、ハイワイヤー誘引
  • 担当:野菜茶研・高収益施設野菜研究チーム
  • 代表連絡先:電話0569-72-1166
  • 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

トマトの施設栽培では、多収生産のためにハイワイヤー誘引による長期多段栽培が行われている。本栽培様式では、主茎長が10m以上になることがあり、作業性の向上や病害の予防のために収穫果房より下位節の葉を摘葉する。根に近い葉から摘葉が進む結果、成熟前の果実付近に位置する葉が、植物体の根部に最も近いソース葉となり、果実と根とで光合成産物の競合が起きる可能性が考えられる。そこで、根への光合成産物の供給を補うために、株元近くの成育が旺盛な側枝の葉(基部側枝葉)を残す処理が、果実収量と糖度に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • トマトのハイワイヤー誘引栽培において、主茎の収穫終了果房より下位の葉は摘葉し、株元近くの成育が旺盛な側枝を1本だけ伸ばして着花節下で摘心し、5枚程度の葉を残す(図1)。基部側枝は、1から2カ月を目安に、新しく出現する基部側枝を伸長させて更新する。
  • 基部側枝葉を残すことで、第1果房より下位の葉が全て摘葉されてから収穫の始まった第3果房以降は、各果房で果実糖度が有意に高くなる(図2)。
  • 収穫開始は、基部側枝葉の有無に関わらず同時期となる。第1果房から第12果房までの収量と不良果収量に有意な差はない(図3)。
  • 株当たりの根活性の指標となる出液速度は、基部側枝葉があることで早くなる(図4).

成果の活用面・留意点

  • 本試験の供試品種は「桃太郎ヨーク」である。
  • 2007年11月1日播種、12月14日定植し、2008年2月22日から6月10日まで収穫した、誘引線高さ2.8mのハイワイヤー誘引・かけ流し式ロックウール養液栽培(各区10株、栽植密度約1975株/10a)での結果である。

具体的データ

図1 基部側枝葉を残したトマトの模式図

図2 果房別の果実糖度対照区は基部側枝なし.*,**はそれぞれ5,1%水準で処理区間に有意差あり.

図3 可販果及び不良果収量各果房5果に摘果.縦線は標準誤差を示す.

図4 株当たり出液速度栽培終了時に地上部根元から約8cmの高さで茎を切断し,90分間の出液量から測定.*は5%水準で処理区間に有意差あり.

その他

  • 研究課題名:トマトを中心とした高収益施設生産のための多収、低コスト及び省力化技術の開発
  • 課題ID:213-a
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:佐々木英和、河崎靖、安場健一郎、鈴木克己、高市益行