芳香性のイチゴ10倍体種間雑種品種「桃薫(とうくん)」

要約

イチゴ10倍体種間雑種品種「桃薫」の果実はモモ様の強い芳香を有する。果肉は柔らかいものの、淡黄橙で色の淡い果実は光沢があり外観が良好で、収量性にも優れる。新規の需要開発・拡大のためのイチゴ品種として利用できる。

  • キーワード:イチゴ、香気成分、種間雑種、10倍体、Fragaria × ananassaF. nilgerrensis
  • 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

モモに類似した香りを有する複倍数性10倍体種間雑種イチゴ「久留米IH1号」は、家庭園芸用に苗が販売され、新潟県や茨城県の一部では営利栽培されている。しかし、収量が少なく、また、果面のつやが劣るなど外観は良好ではない。そこで収量性や果実品質を向上させた芳香性10倍体品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「桃薫」は、8倍体栽培種Fragaria × ananassa「カレンベリー」と2倍体野生種F. nilgerrensis雲南(ジーンバンク保存番号:2070017996)との交雑による5倍体を倍加処理した複倍数性10倍体種間雑種系統K58N7-21を種子親、「久留米IH1号」(「とよのか」×F. nilgerrensis雲南)を花粉親とした交配次代である。
  • 香気成分は、linalool(柑橘系の花様)や2-methylbutanoic acid(汗臭)が少なく、カラメル様(2,5-dimethyl-4-methoxy-2H-furan-3-one、2,5-dimethyl-4-hydroxy-2H- furan-3-one)、ココナッツ様(hexalactoneおよびoctalactone類)、モモ様(decalactoneおよびdodecalactone類)の香気成分が多い(表1)。官能的にもモモ様の香りを強く感じる。
  • 極晩生であり年内収穫は困難であるが、栽培全期間の収量は多い(表2)。
  • 果房内において、頂果(第1次果)は大きいが、第2次果、第3次果と高次になるにつれて果実は小さくなる。そのため、商品果平均1果重は「とよのか」並みである(表2)。
  • 果皮色は淡黄橙で光沢があり、痩果の落ち込みが少ないため外観が優れる(表2図12)。糖度、酸度ともに「久留米IH1号」よりも高く食味はやや良である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 果皮色、香りの区別性を活かし、地域特産品用、贈答用、業務用、観光農園および家庭園芸用に利用できる。
  • 果実全体が淡く着色した時期が収穫適期である。過熟では輸送性に乏しく、未熟では芳香性の特徴が発揮されず、また、食味も劣ることから、適期収穫を心がける。

具体的データ

表1 「桃薫」の主要香気成分濃度(2008年度)

表2 「桃薫」の収量特性および果実特性(2008年度)

図1 「桃薫」の着果状態

図2 「桃薫」の果実

その他

  • 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 中課題整理番号:211j.1
  • 予算区分:基盤、所内プロ(イチゴ倍加半数体)
  • 研究期間:2004~2009年度
  • 研究担当者:野口裕司、森下昌三、室崇人、小島昭夫、坂田好輝、山田朋宏、杉山慶太
  • 発表論文等:野口ら(2009)「桃薫」品種登録出願の番号第24290号