中山間傾斜地における農林地利用変動の影響とその対策

要約

中山間傾斜地では既存作目の衰退人工林化の進行が顕著であるが、現存する耕地は集約的に管理され、周囲も一定の環境管理が施されている。しかし、今後は地域労働力の減少に対応した小規模基盤整備作業受委託組織の形成等が必要となる。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・地域計画研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:傾斜地農業・営農
  • 専門:経営
  • 対象:-
  • 分類:行政

背景・ねらい

中山間地域における農林地利用の粗放化・荒廃化が環境に悪影響を及ぼすことが懸念されている。そこで、高知県大豊町3集落の農林地利用の形態変化と、それに伴って生じる環境変化を把握するとともに、比較対照地域として高知県の土佐町と棄山村を選定し、中山間地域における農林地の保全・管理対策について検討を行った。

成果の内容・特徴

  • 大豊町3集落(69戸)の1945年以降の農林地利用は、人工林化の進行と、かつての基幹作目であった養蚕の衰退が顕著である。また、農地の形態変化としては、田は耕作放棄が最も多く、次いで人工林や採草地への転換となっている。また、畑は山菜畑や採草地、人工林へ、さらに採草地は人工林や雑木林への転換が多く見られた(表1)。
  • 大幅な耕境後退は、基幹作目であった養蚕の収益低下と過疎化・高齢化による農業労働力の減少によるところが大きい。しかし、田畑の耕作を中止する場合でも、数年間は採草地(有機物給源)として一定の管理を行う場合が多く、現存する耕地は敷き藁や堆肥の投入によって集約的に管理されている。
  • 一方、耕地の減少に伴う環境への影響については、「鳥獣害の増加」や「日照不良」、「雑草の増加」など栽培管理上の問題点の指摘が多い反面、「土壌侵食」や「斜面崩壊」等は少なかった。これは作業時や降雨後に一定の環境管理が行われていることの反映である(図1)。しかし、今後は「規模縮小」あるいは「離農」と答えた農家が16戸(23%)と多く、農林地管理機能の低下に伴って環境にも悪影響が生じることが懸念される。
  • 今後の営農方針や基盤整備に対する意向は、経営規模や保有労働力によって異なってきているが(図2)、高齢化の進行する中山間地域では土地基盤条件の良否が農地利用の変動に直接影響を与える(図3)ことから、集落営農を維持・発展させるためには、小規模基盤整備や作業受委託組織の形成等が緊急に必要とされている。

成果の活用面・留意点

中山間傾斜地の現状把握と再編方策の策定に際して、参考となる。

具体的データ

表1.高知県大豊町3集落における農林地利用変動状況

 

図1.過去10年間に耕作地や周辺で見られた変化

 

図2.規模階層別にみた基盤整備の意向

 

図3.土地基盤条件の違いによる水田利用の動向

 

その他

  • 研究課題名:四国地域における農林地利用変動パターンの解明
  • 予算区分:特研〔中山間保全〕
  • 研究期間:平成5年度(平成4~6年)
  • 研究担当者:特研「中山間保全」大豊町調査グループ(四国農業試験場・地域計画研・基盤整備研・環境管理研、森林総合研究所四国支所・林地保全研、農業環境技術研究所・環境立地研)
  • 発表論文等:なし