青果物の需要動向予測手法

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要約

果実野菜について、家庭内需要および需要の世帯間格差*の変化は総需要の変化を予知する先行指標として活用し得る。ニンジン、レタス、ホウレンソウ、カボチャは今後とも需要が伸び、イチゴ、タマネギは飽和が近いと予想される。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:営農
  • 専門:経営
  • 対象:果樹・野菜
  • 分類:行政

背景・ねらい

生産計画の策定においては、需要の構造変化がないことを前提とした予測精度の向上よりも、需要の転換点(最大点や下げ止まり点)を予測することの方が決定的に重要である。そこで、四国農業において大きなウェイトを占める果樹と野菜を対象として、どのような指標を用いると需要の転換が予測可能となるのかを分析する。

成果の内容・特徴

  • 需要の時間的変化を分析した結果、多くの品目[1993年に図の領域II、III、IVにある品目]で1970年代を中心に需要が増加傾向から減少傾向に転じたことが解明された。
  • 果実の需要が最大となった時点の数年前に、 8品目のうち6品目(ブドウ、ミカン、ナシ、ナツミカン、リンゴ、スイカ)において、需要の世帯間格差*が縮小傾向であるという共通の兆候を示していた。したがって、世帯間格差*に関する情報は時間的に見た総需要変化の先行指標としての意義を持ち、生産者に対して需要の減少局面が近付きつつあることを知らせる警報として活用し得る。
  • 約半数の品目(図の※を付した品目)で家庭内需要のピークが総需要のピークに2~10年先行していたことから、家庭内需要の動向は総需要(家庭内+外食+加工)の動向を予測する先行指標として活用し得る。
  • 当研究から導かれる生産計画に関する情報:果実と野菜の需要は、多くの品目で急激に減少する局面にある。1993年時点で需要が増加局面にあるもののうち、イチゴ、タマネギに需要の最大点接近を示すシグナルが出ており、依然として有望なのはニンジン、レタス、ホウレンソウ、カボチャである。リンゴは需要下げ止まり点に接近している可能性が高い。

    注:厳密には「需要の横断面支出弾力性」を意味し、世帯間で見た「需要量の変化率(dD/D)/消費支出の変化率(dY/Y)」と定義され、この値が0に近いほど格差が小さい。これに対し、「時系列支出弾力性」とは同一(平均的)世帯における需要の時間的変化を示す指標であり、定義は横断面と同じ。

成果の活用面・留意点

  • 生産・流通現場では、品種別・規格別のより実践的な情報が必要であり、そのためには、POSシステム等を活用した同様の分析が望まれる。
  • 消費支出は今後とも増加傾向を維持すると想定している。

具体的データ

図.1993年に図の領域II、III、IVにある品目

 

その他

  • 研究課題名:四国特産物(果樹・野菜)の需要動向予測
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(平成4~5年)
  • 研究担当者:多田稔(経営管理研究室)
  • 発表論文等:「果実需要の予測可能性」、農業経営通信、No.175、1993。