ゲノム・スキャニング(RLGS)法によるイネ品種のDNAフィンガープリント

要約

イネから抽出したDNAをゲノム・スキャニング(RLGS)法の二次元電気泳動によって解析した。品種の比較では、日本晴とコシヒカリを正確に区別でき,新しいDNAフィンガープリントとしてきわめて有効である。

  • 担当:四国農業試験場・作物開発部・育種工学研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:生物工学
  • 専門:バイテク
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

品種の同定・識別技術は,植物ゲノム研究の進展にともないDNA多型が利用され始めている。しかし,制限酵素断片長多型(RFLP)や特定DNA断片の増幅を行うPCR法は多数の遺伝子座を一度に解析することには適しておらず,同じ実験操作を繰り返す必要がある。そこで,ゲノム・スキャニング法に着目し,イネ品種に対して新しいDNAフィンガープリントとして利用できることを明らかにした。

成果の内容・特徴

  • イネDNA5μgをNotIで消化,端部をRIで標準化,EcoRVで消化し,そのうち1.5μgをアガロース・ゲル電気泳動(1次元目)し,ゲルのままMboIで消化し,アクリルアミド・ゲル電気泳動(2次元目)した。ゲルを乾燥後オートラジオグラフィーでX線フィルムに感光させ,3,000個以上のスポットを得た。
  • 1次元目(1-D)ではDNA断片長約9kbpから500bp,2次元(2-D)ではおよそ2kbpから100bpの範囲で分離した。
  • 遺伝的に遠縁のインディカ品種とジャポニカ品種との比較では,スポット同士の対応がつきにくい程異なったパターンを示した。インディカ在来品種「柳州包芽早」とジャポニカ型品種「日本晴」との間では,RLGSパターンに基づく遺伝的な近縁度は0.344であった。
  • 遺伝的に近縁のジャポニカ品種同士の比較では,きわめて類似したパターンを示した。「日本晴」と「コシヒカリ」の間では,遺伝的な近縁度は0.980であった。逆にいえば,きわめて近縁の品種間でもゲノム・スキャニング法によって明確に識別できた。

成果の活用面・留意点

  • ゲノム・スキャニング法は少量のDNA試料を用いて品種同定・識別に利用が可能であり,イネ以外の作物にも応用可能と考えられる。
  • 実際の品種同定のためには,各品種のRLGSパターンのデータベースの構築が必要であり,画像データを処理するための装置やソフトウェアが必要となる。 図

具体的データ

図1 ゲノム・スキャニング法によってスポットとして検出された標識化DNA断片による日本晴れとコシヒカリの比較

その他

  • 研究課題名:イネ品種同定のための効率的検定法と分子マーカーの開発
  • 予算区分 :イネ・ゲノム
  • 研究期間 :平成6年度(平成6~9年度)
  • 発表論文等:ゲノムスキャニング法を適応した植物の新しいフィンガープリント
                      育種学雑誌44巻別冊1号(講演要旨),1994
                      Application of the restriction landmark genomic scanning (RLGS)
                      method to rice cultivars as a new fingerprinting technique Theor.
                      Appl. Genet. 89(7-8):861-864, 1994.