傾斜地環境を活用した多芽体培養苗によるシオデ栽培

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要約

シオデの栽培には、日射の緩和と適度な土壌水分のある北斜面や谷筋、林間地等の傾斜地環境が適する。植付け後の潅水、マルチによる土壌水分保持と雑草防止により定着が確実となり、多芽体培養苗定植後丸3年以降の春毎に、萌芽茎が収穫出来る。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・環境管理研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:傾斜地農業
  • 専門:土壌
  • 対象:山菜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

シオデはユリ科のつる性多年草で、草丈3m余、冬期地上部は枯れて春先地中から出るアスパラガスに似た萌芽茎が美味な山菜である。多芽体培養法により苗の供給は確立されたが、生態や栽培に関する知識は乏しい。そこで、栽培化の情報を(1)山地斜面の微地形と周辺植生に伴って環境条件の異なる5地点で栽培したシオデの生育反応から、また(2)善通寺市の試作農家の栽培の観察、さらに(3)若齢シオデ個体の光合成能測定等により得る。

成果の内容・特徴

  • 栽培地点の受光量は露場に対し崖下では3割、ポプラ林では6割に低下した。また、土壌水分は崖下では長くpF2以下に保たれ、テラスでは2週間でpF3に至った(図1)。
  • 定植後2、3年の生育は受光量が少く土壌水分の多い地点程良好であった(図2)。
  • 敷わらや黒ポリマルチによる土壌水分保持と雑草防止をした農家では、活着と2年目の生育が良好であったが、マルチしない場合には、雑草との競合による枯死株が多い。山寄りの棚田転換圃の生育は良好であったが、停滞水の生じる時期のある平坦水田転換圃では、活着は良かったものの、2年目以降の生育が劣る傾向(図3)が見られた。
  • 半日陰の得にくい場合には定植後と1~2回目の夏期、黒寒冷紗等で50%遮光する。灌水の効果は大きく、多水分を好む植物である(図2)。
  • 定植3年7ケ月後の5月に、1回目のまとまった萌芽茎収穫が得られた。収量は収穫までの生育量に比例する傾向があり、最高収穫154Kg/10a(図2)、株当り収穫本数は3.2本であった。なお、多芽本培養苗由来株の地下茎部は、多数の根におおわれた塊状で、複数の芽(次年度萌芽する冬芽)を形成することが明らかになった(写真1)。
  • (1)シオデの光飽和点は低く陰性植物的であるが、その光合成能は比較的高い。(2)気温32°Cでも光合成速度はあまり低下せず、高温下でも栽培可能なことが判明した。

成果の活用面・留意点

  • 施肥量・土壌反応、実生苗栽培ならびに雌雄性については未検討であるが、苗活着後の管理は比較的容易で耕作放棄棚田や休耕地利用栽培の可能性がある。
  • まれにではあるが、野ウサギによる萌芽茎(若茎)食害のほか、展葉して蔓状になった時期における原因不明の立ち枯れ症状ならびにルリタテハ(蝶)幼虫による食害が観察された。今後は作物保護の観点からも栽培管理法を検討する必要がある。

具体的データ

図1.シオデほ場の光・土壌水分環境 図2.環境条件とシオデの地上部全乾物と萌芽茎生収量

 

図3.ほ場環境と農家のシオデの生育の関係 写真.定植して3年3ヶ月後の多芽体培養苗の地下茎部

 

調査地点の説明

 

その他

  • 研究課題名:傾斜地環境を活用したシオデの栽培
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5~7年度)
  • 発表論文等:
    1)シオデの生育環境解析-微地形を利用した栽培について-四国土肥協研報,27,1994.
    2)シオデの光合成特性について日本作物学会四国支部紀事,29,1992.