軟弱葉菜類収穫機

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要約

ホウレンソウや小松菜をはじめとする軟弱葉菜を対象とした収穫機を開発した。固定式の根切り刃で地中の根を切断し、ゴムスポンジを貼り付けたベルトで葉茎部を挟み、機上に引き上げコンテナに収納する。走行速度0.2m/s程度での収穫が可能である。

  • 担当:中国農業試験場 作物開発部 機械化研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:作物生産(機械・施設)、野菜・花き
  • 専門:機械
  • 対象:農業機械
  • 分類:研究

背景・ねらい

近畿・中国地域における葉菜類の生産は、農地の減少や、農業者の高齢化・後継者不足などの理由により、ここ数年横這いもしくは漸減傾向 を示している。また、一般に野菜作では、収穫・調製作業を人手に依存しており多くの労働時間が必要とされている。そこで、ホウレンソウに代表される軟弱葉 菜類の機械収穫作業技術の確立を目的とし、軟弱葉菜収穫作業の機械化・軽作業化をねらっている。

成果の内容・特徴

  • 本収穫機(SH-963)は、前年度報告した「露地栽培用ホウレンソウ収穫機」を改良し、条間15cmまでの密植栽培様式への対応、ホウレンソウ以外の軟弱葉菜への適用、一人作業などを可能にした、一条往復刈りの歩行型収穫機である(図1、表1、2)。
  • 掘り取り部は、ディバイダガイドと固定式の根切り刃からなり、地中2~3cmの位置で根を押し切る。引き上げ搬送部は、Vベルトに貼り付 けた一対のゴムスポンジにより収穫物を挟み機上に搬送する。収納部は、引き上げ搬送部後方に収納容量58Lのコンテナを搭載し、搬送されてきた収穫物を収 納する(表1、図1、2)。
  • 供試した栽培・作業条件(5条/畝、条間15cm、畝幅1.5m、畝長40m、走行速度0.2m/s)で作業能率を試算(回行、コンテナ扱いを含む)すると約1a/hとなる(表2)。
  • ホウレンソウ収穫時には、多くの収穫株に折れや千切れの損傷が発生するが、それらは外葉茎部に集中している(90%以上)。子葉及び本葉 2枚までを下葉として除去してもよいと設定した場合の調製後損傷率(株ごとの葉数に対する調製後の損傷葉数の割合)は、12%程度(6~16%)である(表2)。
  • ホウレンソウの他に、小松菜、ベンリ菜、チンゲンサイなどを収穫できる(表2)。

成果の活用面・留意点

本機は畝幅1.2~1.5m、畝高さ0~20cm、畝間20cm程度(走行路として必要)に適用できる。なお、回行のために幅2.5m程度の枕地を必要とし、土壌は乾燥状態が望ましい。また、草姿が立性となる品種が適しており、草丈20cm以上で収穫が可能である。

具体的データ

図1 軟弱葉菜類収穫機の構造

表1 軟弱葉菜類収穫機の主な仕様

図2 収穫ヘッドの詳細構造

表2 収穫調査結果の例

その他

  • 研究課題名:葉菜類の収穫機及び収穫作業技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成4~8年)
  • 研究担当者:吉田智一、窪田潤
  • 発表論文等:軟弱葉菜類収穫技術の開発、第56回農機学会年次大会(1997.4)
                      日本農業新聞、朝日新聞、中国新聞、農村ニュース、NHKニュース、他