傾斜地カンキツ園における小型機械化体系

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要約

傾斜地カンキツ園では、園内作業道を整備し、歩行形の小型作業機を導入することによって、高品質果実生産を維持し、かつ管理作業の実作業時間30%削減できるとともに、作業の軽作業化も図ることができる。

  • 担当:四国農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
  • 地域基盤研究部・機械施設研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:傾斜地農業、作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:微生物
  • 分類:普及

背景・ねらい

我が国のカンキツ作では、傾斜地を活かした高品質な果実生産が行われている。しかし、基盤整備・機械化が遅れ、生産農家に長時間の重労働が強いられている。そこで、高品質果実生産を維持して、管理作業の軽労・省力化を図る小型機械化体系を開発する。

成果の内容・特徴

  • 園地整備法(図1):1園内の等高線方向に2樹列あるいは1樹列おきに道幅1~1.2mの園内作業道を設置する。2上下方向に勾配15度以下、道幅1.3m以上の連絡道を設けて園内作業道と農道を接続する。3園内作業道に直径2mの旋回部を設置する。4園内作業道の山側を低くして排水路兼用型とする。5園内作業道は簡易舗装を行い、連絡道はコンクリート舗装を行う。6園内に貯水槽などの給水施設を設ける。
    本整備により、小型風筒式防除機等の小型作業機が導入できる(表1)。
  • 作業者の心拍数増加率(労働負担)が大きい防除、施肥作業は、小型風筒式防除機、肥料散布装置の導入によって、軽作業化を図ることができる。除草作業では、園内作業道の簡易舗装による除草面積の減少と小型除草機による作業姿勢の改善により、労働負担及び作業時間の減少を図ることができる。高所作業兼用型運搬車の利用により運搬・高所作業・積み込み作業が省力化され、収穫作業時間が減少する。これらの結果、実作業特間を約30%削減できる(図2)。
  • 3年間に渡って園内作業道を整備した実証園では、出荷量の減少もほとんどなく、果実単価も地区平均より高く、高品質栽培を維持できた(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 傾斜15~25度の斜面畑に導入できる。区画が20a以上では、トラックが園内に進入できる道幅1.8m以上園内道を設ける。
  • 園内作業道の整備は、排水促進、樹体内部の日照条件の改善などにより、品質向上効果がある。
  • 省力化で生じた余剰時間は、規模拡大、高付加価値栽培に活用する。
  • 技術紹介ビデオ「楽しくておいしいみかん作り」(日本語版、13分間)と「Mechanized farming system on sloping citrus orchards in japan」(英語版、12分間)を作成・配布。

具体的データ

図1.小型機導入のための園地整備法

 

表1.小型機械化体系

 

図2.実証圃における小型機械化体系

 

表2.実証圃の概況と果実生産

その他

  • 研究課題名:園内整備技術、機械化技術の定着条件の解明
  • 予算区分:実用化促進(地域総合)
  • 研究期間:平成9年度(平成5~9年)
  • 研究担当者:宮崎昌宏・長谷川美典・山本 博・中尾誠司・高辻豊二・猪之奥康治・角川 修・長崎裕司・田中宏明
  • 発表論文等:農業技術52(5)、P14-18、1997