卵寄生蜂メアカタマゴバチの生活史形質と形態形質の遺伝的背景

要約

有用天敵メアカタマゴバチの生活史形質と形態形質の遺伝率は前翅の幅を除き中程度である。各形質の遺伝相関と表現型相関には整合性の見られない場合もある。

  • 担当:中国農業試験場・地域基盤研究部・虫害研究室
  • 連絡先:0849-23-4100
  • 部会名:生産環境(病害虫)
  • 専門:作物虫害
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

卵寄生蜂メアカタマゴバチは鱗翅目害虫の有用な天敵である。生態学的研究は進んでいるが,その遺伝的背景はほとんど知られていない。ターゲット害虫に対して高寄生能力系統等の選抜の可能性や大量増殖時のクオリティコントロールには蜂の遺伝的背景を理解する必要がある。そこで,卵寄生蜂メアカタマゴバチ Trichogramma chilonis の生活史形質と形態形質の量的遺伝学的解析を行う。

成果の内容・特徴

  • 野外から採集したメアカタマゴバチを用い,ランダムに選択した親成虫の雄にそれぞれ数頭の雌を組み合わせてできた子どもについて生活史形質(総産卵数,1日目の産卵数,雌成虫の寿命)と形態形質(前翅の長さと幅,後脚のけい節の長さ)について量的遺伝学的解析を行った。
  • 前翅の幅を除く各形質の遺伝率は中程度である(表1)。これはそれぞれの形質について選抜が可能であることを示す。
  • 各形質の遺伝相関と表現型相関には整合性の見られ場合もある(表2)。これは視覚的にとえられる形質相関にはすべて遺伝的な背景が関与するとは限らないことを示す。
  • 産卵数に関係する形質と後脚のけい節の長さ(体の大きさに関する指標)に弱い負の遺伝相関が認められる。これは大量増殖中によく産卵する個体が選択される場合,体が小さい(足が短い)個体になる可能性があることを示す。このような負の遺伝相関が認められる場合,大量増殖でのクオリティコントロールに注意する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 本成果で示したようにすべての形質や視覚で捉えられる表現型相関が必ずしも遺伝的背景があるわけではないので他の天敵類でも同様な試験が必要である。

具体的データ

表1.各形質の遺伝率

 

表2.各形質の遺伝相関と表現型相関

その他

  • 研究課題名:性調節機構を導入した卵寄生蜂有用遺伝資源維持法の開発
  • 予算区分 :バイテク
  • 研究期間:平成11年度(平成5~11年)
  • 研究担当者:三浦一芸、小林正弘
  • 発表論文等:卵寄生蜂 Trichogramma chilonis の量的形質の遺伝学的解析、日本昆虫学会第56回大会・第40回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨、59、1996.