法面等の雑草鋤込み・露地ビニルマルチによる土壌物理性改善と雑草発芽抑制

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要約

法面等から刈り取った風乾雑草500kg/10aを露地畑に浅く鋤込み、夏季に3週間程度露地ビニルマルチ処理により一定の高地温条件を満たすと、粘質土 壌の土壌物理性が改善でき、雑草の種子発芽を抑制できる。5cm深の地温は最寄りの地点の気象観測データなどから予測できる。

  • キーワード:雑草鋤込み、ビニルマルチ、雑草、発芽抑制、太陽熱利用、地温、物理性改善
  • 担当:近中四農研・野菜部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:電話0773-42-0109 電子メールkhori@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料、総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近畿中国四国地域の中山間地の小規模野菜産地では、法面等の雑草の処理が問題となっている一方で、植物質有機物の施用不足が懸念されている。また、雑草の発芽抑制をめざして、夏季にビニルマルチを用いた太陽熱処理が行われているが、ビニルハウス内では効果が安定しているが、露地では地温が気象条件に大きく左右されるので安定した効果が得られる条件を明らかにする必要がある。そこで、未利用有機物資源である法面等の雑草を有効利用するために、夏季の露地畑に刈り取った雑草を鋤込み、ビニルマルチを用いた太陽熱処理により、粘質土壌の物理性改善をめざすと同時に雑草の種子発芽を抑制する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 鋤込んだ雑草(500kg/10a)の種子は、夏季3週間のビニルマルチを用いた太陽熱利用処理により、著しく発芽が抑制さ れる。この際、ビニルマルチのみでも顕著な効果が認められるが、米ぬかまたは石灰窒素の併用によって更に効果が高まる。また、石灰窒素を併用した場合はマ ルチ除去時に硝酸態窒素は残存しないが、米ヌカ併用、雑草のみでは硝酸態窒素が4~5mg残存するので、窒素減肥が望ましい。(表1)
  • 雑草を鋤込み、ビニルマルチ処理を行った区では、窒素資材の併用の有無に関わらず粗孔隙が増加し仮比重が低下するなど粘質土壌の物理性が改善される(表1)。
  • 試験圃場のビニルマルチ区の5cm深の地温は、最寄りの気象観測データにより、4変数(気温、湿度、日射、風速)を用いた重回帰式で有意に(R*=0.89)推定が可能である(表2)。
  • 近中四農研センター野菜部圃場内で、ビニルマルチによる雑草発芽抑制効果が大きかった試験圃場と処理時期が異なったために発 芽抑制効果が小さかったY圃場とを比較すると、最高気温30℃以上の日数、気温30℃または33℃以上の積算時間などには違いが認められないが、日照時間 の積算時間及び地温の45℃以上の日数とその積算時間は、雑草の発芽抑制効果が大きい試験圃場の方が長い(図1、表3)。

成果の活用面・留意点

  • 法面等から刈り取った雑草を有機物資源として積極的に利用するための基礎資料として活用する。
  • 最寄りの地点の気象データからマルチ処理期間の5cm深の地温を推定して、雑草発芽を確実に抑制する条件を満たす必要がある。
  • 充分な地温上昇は土壌表層であるので、雑草種子発芽抑制効果を維持するために処理後は耕起しないで、移植・播種を行う。
  • 鋤き込んだ雑草は、メヒシバ、ホトケノザ、ギシギシ、タンポポ等を主とした混合物(C/N=16)であり、鋤込み量は500kg/10aで、鋤込み深さは10cmである。発生した雑草はメヒシバ、タイヌビエが主なものであった。
  • 各種雑草種子の発芽能がなくすために必要な地温とその継続時間については引き続きデータを集積する必要がある。

具体的データ

表1   ビニルマルチ除去6週後に発生した雑草の株数、新鮮重と土壌の理化学性

 

図1 マルチ処理期間中の地温(5cm)の推移

 

表2 地温(5cm)推定のための重回帰式

 

表3 マルチ処理時期が異なる圃場の気象条件

 

その他

  • 研究課題名:化学肥料低減のための効率的肥培管理技術の開発
  • 課題ID:06-06-03-*-14-03
  • 予算区分:高品位野菜
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:堀 兼明、福永亜矢子、須賀有子、池田順一