草地小流域土壌の乾燥程度が降雨流出に及ぼす影響

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要約

草地小流域からの流出現象は、流域土壌の湿潤程度(流域内平均土壌飽和度)に強く影響を受けている。流域内飽和度の変化は対象流域で一定の関係として表すことが可能であり、これまで不明な点の多かった損失雨量の推定などに大きく寄与しうる。

  • キーワード:流出現象、流域内平均土壌飽和度、流域条件、降雨流出モデル、損失雨量
  • 担当:近中四農研・傾斜地基盤研究部・基盤整備研究室
  • 連絡先:0877-63-8119,bonjour@affrc.go.jp
  • 区分:近中四農業・生産環境・(土壌・土木・気象)、農業工学
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

四国地域の中山間傾斜地には数多くのため池があるがその中には老朽化しているものも多く見られる。これらのため池はその性 格上、後背地面積は小さいものの水が集中するところに立地している場合が多く、老朽化したため池では集中豪雨などによる災害が発生しやすい状況になってい る。これを防止しまたはその危険度を予測するためには災害発生の誘因の一つと考えられるため池水位の急上昇を引き起こす大流出の発生機構を明らかにするこ とが重要な課題となる。

成果の内容・特徴

  • 広さ2.4ha(平均勾配33度、河道勾配9度)の単純斜面流域からの流出は同程度の降雨であってもそれが連続することに よって次第に流出量が増加する等の特徴が見られる。このため、降雨量と損失雨量または流域保留量(=降雨量-流出量)との関係は大きくばらつき、降雨条件 のみからは流出量を推定することは困難である(図-1)。
  • 流域内9点で計測した土壌水分量から求めた飽和度(土壌水分量/飽和土壌水分量)を平均して求めた流域平均飽和度の降雨による増加量と降雨量の間には明確な関係が認められ(図-2)、また、降雨時の最大飽和度とピーク流量の間にも明確な関係が認められる(図-3、最大飽和度とピーク流量の相関係数=0.83、降雨量とピーク流量の相関係数=0.55)。
  • 流域内平均飽和度の降雨後の減少はほぼ一様な曲線に収束し、概ね一つの関係式で表すことができる(図-4)。
  • これらから、流域からの流出現象は流域の湿潤程度(流域平均飽和度)に大きな影響を受けていると言える。また、流域の飽和度 の降雨による増加、降雨後の減少過程はほぼ一定の関係で表すことができ、流域条件としてこれをモデルに組み込むことによってより的確な降雨流出現象の表現 に大きく寄与することができる。

成果の活用面・留意点

  • より多くのデータを蓄積することによってこのメカニズムの一般化を図る必要がある。

具体的データ

図-1流域からの降雨流出の特徴

 

図-2 降雨量と飽和度の関係

 

図-3 ピーク流量と飽和度の関係

 

図-4 飽和度の低減特性

 

その他

  • 研究課題名:中山間地域における小流域の流出特性の実態解明
  • 課題ID:06-02-01-01-02-03
  • 予算区分:集中豪雨
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:井上久義、内田晴夫、細川雅敏