カンキツ園におけるマルドリ方式施設の設計支援システム

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要約

カンキツの周年マルチ点滴かん水同時施肥法(マルドリ方式)の導入に必要な施設設計において、かん水時の点滴チューブ内水圧の計算、園地が大きい場合のブロック区分の決定、費用の概算などの作業を支援するコンピュータプログラムを開発した。

  • キーワード:カンキツ、周年マルチ点滴かん水同時施肥法、マルドリ方式、水理設計
  • 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:電話0877-63-8115、電子メールshima@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究、近畿中国四国農業・果樹、果樹・栽培
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

カンキツ園において周年マルチ点滴かん水同時施肥法(マルドリ方式)を導入する場合など、点滴かん水施設やマルチを園地に設置するためには適切な施設設計が必要となる。設計においては、水源の能力(流量や圧力)、使用機材の機能、園地の地形などの情報を用いて、かん水時における点滴チューブ内の水圧の計算、かん水ブロックの分け方の決定などを、費用を考慮しながら行う必要がある。しかし、この作業は比較的煩雑で、普及組織や農家が自ら設計することは困難な場合が多い。そこで、比較的収集の容易なデータを入力すれば、かん水時の状況や概算費用、機材の適否などを出力して、利用者が入力・出力の試行の繰り返しにより適切な設計を行うことを支援するシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 水源や園地内樹列の高さや位置などの簡略的な地理情報,使用するパイプや点滴チューブの規格、その他の機材の規格などを入力すると、かん水時の流量、点滴チューブの水圧、使用条件に制限がある機材について制限を越える場合の警告、使用機材(パイプや点滴チューブ、マルチを設置する場合はシートも含む)の数量と費用の概算値などを出力するコンピュータプログラムを開発した(図1)。
  • 水源や機材の能力に比べて園地が大きいこと等により園地のブロック分割が必要な場合には、最低必要ブロック数を出力する。
  • 動作時の表示は上側の操作部と下側の表示部に分かれている(図2)。操作部はデータの種類(樹列データ、機材データなど)毎に表示を切り替えることにより、同時に表示される情報を少なくして容易に操作できるものとなっている。表示部は計算結果の数値表示とともに、想定機材が不適切な場合の警告を簡潔に表示する。
  • 本システムで用いる水理計算手法は,一般に広く用いられている標準的なものであるため、計算精度等は実用上問題ない。
  • プログラムの形式を旧バージョンのJavaアプレットとしたため、ほとんどのコンピュータで動作し、コンピュータの専門知識を用いずに利用でき、かつ、使用機材データの追加や機能追加などのシステム拡張が容易である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、高品質果実の生産や隔年結果軽減に有効な、マルドリ方式などの点滴かん水施設やマルチを利用する栽培法の導入に役立つ。さらに、カンキツ園に限らず点滴かん水施設の設計に一般的に利用可能である。
  • 入力する地形データの精度は、条件によるが、価格数万円程度の測量器具または巻尺と傾斜計等による測定値程度(±50cm~1m程度)で多くの場合に実用上問題はない。
  • 本システムは、当機構への申請・審査後に無償で利用可能とする予定である。また、ソースコードも同時に配布可能とする予定であるため、必要に応じて利用者が処理機能や対応機材の拡張を行うことができる。
  • データのファイル保存を行うためには、新しいバージョンのJavaを用いた上で一定の設定作業が必要である。

具体的データ

図1 システムの機能と利用状態の概略

図2 システムの動作状況例

その他

  • 研究課題名:点滴灌水同時施肥法等による迅速養水分供給技術の開発
  • 課題ID:06-01-07-01-22-04
  • 予算区分:カンキツ連年生産
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:島崎昌彦、草塲新之助、星 典宏、森永邦久
  • 発表論文等:1) 島崎ら(2005) 園学雑Vol.74(別冊1):果05
                      2) 近中四農研(2003) 周年マルチ点滴灌水同時施肥法(マルドリ方式)技術マニュアル
                      3) 農研機構(2005) プログラム著作物登録「マルドリ方式施設設計支援システム」