甘草抽出精製物の数種野菜類茎葉病害に対する発病抑制

要約

甘草を原料とし、各種フラボノイド類、グリチルリチン酸を含む抽出精製物は各種植物病原糸状菌に抗菌性を有し、トマト、キュウリ、ピーマン等の茎葉病害の発病抑制効果を有している。

  • キーワード:甘草、licorice、抽出精製物、抗菌性、野菜病害、発病抑制
  • 担当:近中四農研・地域基盤研究部・病害研究室
  • 連絡先:電話084-923-5336、電子メールmiyagw@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)、共通基盤・病害虫(病害)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

一般に野菜類の茎葉病害の防除は化学合成農薬に依存しているが、近年の環境保全型農業に対する関心の高まりから、農薬を用いない防除法の開発が求められている。一方、マメ科多年性植物の甘草(licorice)の根茎に多く含まれるグリチルリチン酸はショ糖の約170倍の甘味を有し、更に抗炎症作用、抗潰瘍作用等の薬理作用があるため、食品甘味料、医薬品、化粧品等の原料として広く使われている。一般に食品甘味料として用いられている甘草抽出物は、熱水抽出によるものである。一方、医薬品等の素材としてのグリチルリチンの誘導体を甘草根より抽出する際、最終過程でグリチルリチンを晶析させた後の残液は今まで廃棄されていたが、この残液が植物病原菌に対し強い抗菌作用を有することが明らかとなった。そこで、本抽出残液を粉末化した抽出精製物を用いた病害防除法の開発を目指す。

成果の内容・特徴

  • 供試甘草抽出精製物は多数の植物病原糸状菌に対し100~1000μg/mLの濃度で対照の抽出物(甘草熱水抽出物)と比べて高い菌糸伸長抑制効果を示す(表1)。
  • 甘草抽出精製物と病原菌胞子を混合して植物(トマト、キュウリ、ピーマン)に接種する方法あるいは先に甘草抽出精製物を散布し翌日に病原菌を接種する方法のいずれの場合も、甘草抽出精製物は、甘草熱水抽出物と比べ高い発病抑制効果を示す(表2)。
  • 甘草抽出精製物(1%)をトマト、キュウリの下位葉に散布し、風乾後あるいは翌日に病原菌を接種すると、甘草抽出精製物の散布されていない上位葉にも発病抑制効果が発現し、それらにおける病斑数が減少した(図1)。
  • 甘草抽出精製物をエタノールの濃度を変えてカラムで分画すると、70~99%エタノールで溶出した親油性画分に高い発病抑制効果が認められた(図2)。親油性画分の主要フラボノイドであるリクイリチゲニン、イソリクイリチゲニンはトマト褐色輪紋病菌の菌糸伸長抑制率が高く(データ略)、これらが有効成分の一つと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 甘草抽出精製物の製剤化の目処は立っているが、平成17年3月現在、農薬取締法に基づく登録がされていないので、試験研究以外には使用できない。
  • この甘草抽出精製物の防除効果については圃場試験で確認する必要がある。

具体的データ

表1.甘草抽出精製物の抗菌スペクトラム 図1.甘草抽出精製物非散布葉及び散布葉に おけるトマト褐色輪紋病の発病抑制

 

表2.甘草抽出精製物の発病抑制効果 図2.甘草抽出精製物のエタノール分画物の トマト褐色輪紋病発病抑制効果

その他

  • 研究課題名:甘草抽出物の作物病害に対する防除効果及びその作用機作の解明
                     (丸善製薬株式会社との共同研究:2003年度)
                      機能性植物抽出物による植物病害抑制技術の開発
  • 課題ID:06-08-01-*-14-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:宮川久義、山本正次(丸善製薬(株))、大野裕和(丸善製薬(株))
  • 発表論文等:特願2004-133646(植物病害防除剤及びその製造方法並びに農薬及び肥料)