シバ型草地放牧によって生産された牛肉の特性

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要約

シバ型草地放牧によって生産された黒毛和種去勢牛における肉中の粗脂肪含量は減少し、抗酸化物質であるβ-カロテン及びビタミンE含量は著しく増加し、機能性物質である共役リノール酸含量も若干増加する傾向にある。また放牧によって肉の変色は速くなり、せん断力価は高くなる傾向にある。

  • キーワード:シバ、放牧、肉用牛、共役リノール酸、β-カロテン、ビタミンE
  • 担当:近中四農研・畜産草地部・産肉利用研究室
  • 連絡先:電話0298-82-2047、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業(畜産草地)、畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

米国産輸入牛肉に対する不安を背景として、消費者が牛肉に求める安全志向は近年にない高まりを見せている。また、日常の食生活の中 で健康によい食材を求めるヘルシー志向は高級霜降り牛肉とは明らかに異なるニーズである。放牧を活用して生産された牛肉は舎飼肥育によって生産された牛肉 よりも「安全」で「ヘルシー(脂肪分が少ない等)」なイメージを与えているが、この「ヘルシー」である科学的根拠を明示することで、国産牛肉に対する新た な需要の喚起が期待できる。そこで同じ月齢の黒毛和種去勢牛を用いて「放牧区」と「舎飼区」を設定し、放牧によるメリット・デメリットを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種去勢肥育牛8頭を2つのグループに分け、1つはそのまま舎飼で肥育を継続する「舎飼区」(濃厚飼料飽食、乾草1.5kg)とし、もう1つはノシバ優占草地でと畜までの3ヶ月間放牧する「放牧区」(濃厚飼料の補給はしない)とする。両区ともに24∼25ヶ月齢で屠殺し、格付け、解体後、半腱様筋(ST)、腰最長筋(LL)、大腰筋(PM)および皮下脂肪を採取する。STはβ-カロテン、ビタミンE、粗脂肪含量、せん断力価、メトミオグロビン割合(変色の度合い)の分析に供し、LL、PMおよび皮下脂肪は共役リノール酸の分析に供する。BMSNo.は放牧区が3.8、舎飼区が4.5、冷屠体左半丸重量は放牧区が140.2kg、舎飼区が194.2kgであり(いずれも平均値)、放牧により脂肪交雑はそれほど低くはならない。
  • ST中のβ-カロテン含量は放牧によって著しく増加し、ビタミンE含量も約4倍に増加する。また、ST中の粗脂肪含量は約40%少なくなる(表1)。
  • 共役リノール酸含量は皮下脂肪、LL、PMいずれにおいても放牧区でやや高い傾向にある(表2)。また熟成中のSTのせん断力価は放牧区において高くなる傾向にある(図1)。
  • メトミオグロビン割合は30∼40%になると消費者の購買意欲が失われるとされているが、4℃蛍光灯下で展示中のSTのメトミオグロビン割合は放牧区が舎飼区よりも約3日速く30%に達する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験では月齢や系統による個体差を排除するため、本来は舎飼肥育に向いている黒毛和種去勢牛を供試していることに留意する必要がある。
  • 肉の変色の速さはSTのように放牧区が舎飼区よりも速い部位が多いが、差がない部位(PM)もある。

具体的データ

表1.半腱様筋中のβ-カロテン(μg/kg)

 

表2.共役リノール酸含量(mg/g)

 

図1.熟成中の半腱様筋(ST)の
せん断力価(kg)

 

図2.4℃、蛍光灯下での半腱様筋(ST)の
メトミオグロビン割合(%)の変動

 

その他

  • 研究課題名:シバ型草地を主体とした自給粗飼料により生産された牛肉の特性解明
  • 課題ID:06-07-03-*-06-05
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:松本和典、柴田昌宏、相川勝弘、安藤 貞、西口靖彦、早坂貴代史