斜面における垂直回転軸型マイクロ風車の性能と導入へのポイント

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要約

標高1000m程度の斜面上に垂直回転軸型マイクロ風車を設置する場合、同じ風速でも含まれる鉛直成分の方向により約4割の発電量差があり、下降成分を持つ風の発電出力が高いこと、平地に比べて風速の鉛直変動が大きく、風車が損傷を受け易いことなどに留意する。

  • キーワード:斜面、マイクロ風車、風力発電、上昇成分、下降成分
  • 担当:近中四農研・中山間傾斜地域施設園芸研究チーム
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・農業気象、近畿中国四国農業・農業環境工学
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

マイクロ風車(出力規模が1kW未満の風車)は、最近、急速に高性能化、低価格化が進み普及しつつあるが、未だ利用目的に応じた技術導入のための指針は示されていない。そこで、商用電源を得られない中山間傾斜地における施設営農技術への適応を目的として、NEDOの局所風況マップでは地上高30mにおいて年平均風速5~6m/sとされる地点において垂直回転軸型マイクロ風車の実地試験を行い、発電性能や導入上の留意点を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 徳島県西部の中山間傾斜地域(図1)において、マイクロ風車に太陽電池モジュールを付設したシステム(図2の諸元表)の発電量は、日平均風速2.4m/s、平均日日射量10.6MJ/m2の条件下で、日平均で約500Wh、年間で約180kWhである。季節別に見ると、風力と太陽光の発電量がともに安定している秋季や春季では高い発電量が得られるが、冬季には太陽光発電量、夏季には風力発電量が低く、総発電量が低い(表1)。年間を通じ安定的な電力を確保するには、ハイブリッド利用(太陽光発電との併用)が必須になる。
  • 下降成分が含まれる風では、ほぼ、公称出力並の出力が得られるが、上昇成分が含まれる風では、公称出力の約60%程度の発電出力になる(図2)。このため、設置場所の標高、および上昇風や下降風の頻度差が発電出力に大きく影響する。
  • マイクロ風車の試験地では、年間を通して、斜面背後や正面からの風の頻度は低く、北北西、東南東の2方位が卓越しており、風速も大きい(図3)。これら卓越風は、上昇成分をともなう風となる場合が多く、周囲の微地形によって収束し、吹き上げる風が発電の主要因であると考えられる。このように、斜面上においては、風車が捉えることができる風向は大きく制限を受ける。
  • マイクロ風車の試験地では、1年間の観測期間中、低気圧やと台風通過時にの強風時、風速が耐風速未満の風速にもかかわらず、交換・修理を必要とするブレード変形が2回発生している。斜面上で運用するマイクロ風車の機種選択においては、平地と比較して風速の鉛直成分が大きくなることから、その構造や強度を十分考慮する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 試験地は、標高1080mの急峻な東北東向き斜面上に位置し、周囲には木々などの地物の無い開けた場所にある。すぐ背後には標高1096mのピークが位置している。
  • 本試験に用いたマイクロ風車、太陽電池モジュールの単体価格は、44万円、11万2千円(平成16年10月15日時点、税抜)であり、用途に応じて様々なオプションが用意されている。現在は、同メーカより、発電出力が2倍になったマイクロ風車が発売されている。
  • 成果2より、マイクロ風車の設営位置の選定には、平均風速や風速頻度分布だけでなく、下降風の頻度を考慮に入れるとよい。

具体的データ

図1 試験地の地形的概要

図2 風速と発電出力の関係

表1 季節別発電量

図3 現地の年間風況について(左:風速頻度分布、中:風配図、右:風向と風速の関係)

その他

  • 研究課題名:風力や太陽光エネルギーの効率的利用のための賦存量評価に基づくハイブリッド小風力発電エネルギー等の安定的利用技術の開発
  • 課題ID:213-c
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:柴田昇平、菅谷博