地域産大豆への加工用需要を利用した中山間小規模大豆産地の維持

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要約

中山間地域の小規模大豆産地は、強い需要をもつ加工業者との原材料大豆の高価格安定取引、豆腐製造の付加価値を産地や地域への還元、流通販売経路の短縮等のもたらす経済効果によって、大豆産地を維持することができる。

  • キーワード:中山間地、小規模産地、豆腐、加工需要、付加価値
  • 担当:近中四農研・営農流通チーム
  • 連絡先:電話084-923-5327、電子メールtaichi@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・営農
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

中山間地域の小規模な大豆産地は相対的に競争力が弱いが、これを維持継続させることは、地域農業にとって重要な課題となっている。そこで本情報では、地域産大豆使用豆腐の需要を利用して産地維持するための、大豆取引の取り組等について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 各産地の概要を表1に示した。各産地は、大豆作付面積6.8(B産地)~27.2ha(A産地)の小規模産地であるが、地域産大豆使用豆腐用の販売割合は24.4(A産地)~100.0(C、D産地)%であり、各産地とも豆腐用は最もその割合が高い。
  • 大豆生産者価格を図1に示す。平年の豆腐用大豆は60kg当たり約1,200(D産地)~4,800(B産地)円高く、不作により市場価格が高騰した2004年でも1,000円(A産地)~1,500(E産地)円高く販売されている。C産地は豆腐用取引のみで県内の他産地市場価格より2,000円程度は常時高価格になる。これらの高価格は地域内加工業者の強い需要による地域大豆へのプレミアム(割増)によるものである。地域外では当該地域産大豆のプレミアムは成立しないため、このような高価格の実現は困難になる。
  • 産地と取引する豆腐製造業者の大豆1t当たりの付加価値額とその労働分配率(人件費/付加価値額)を図2に示した。労働分配率は50.4(D産地)~72.9(B産地)%と豆腐製造業全般の49.8%より高い。これは、一般国産大豆使用豆腐より1丁約50円以上高い150~200円で地域産大豆使用豆腐を販売できることに基づいてる。地域産大豆の需要は、量は限定的ながら強く安定し、産地供給量とのバランスがとれている。この需要に基づく豆腐製造の付加価値は、原材料取引によって生産者へ、雇用を通じて地域へ、豆腐販売により業者に配分され、産地と地域に経済的に寄与している。
  • 流通においては、強い需要に基づいた安定的な販売先の確保によって大豆価格変動の影響を緩和しつつ(全産地)、図3にあるように、流通の中間段階削減(A・D産地)、同一地域内製造業との取引(A~D産地)によって、商取引、輸送コストなどを削減して、大豆安定取引と生産者の所得増加に寄与している。
  • 以上のように、地域における加工用需要への対応によって、中山間地域(A~D)産地においても、平場地域(E)産地と同等かそれ以上の地域経済効果を実現している。また、このような効果を安定的に発揮させるためには、市場価格高騰時における転売のような短期的収益極大化を自制した需要者対応、付加価値の産地や地域への還元にたいする意識の醸成、それに基づく地域産大豆使用豆腐の消費活動への働きかけ等を同時に行うことも必要になる。

成果の活用面・留意点

  • 産地の維持、地域産大豆の活用、地産地消活動の活性化等に有効な情報である。
  • 上記とは別に、2等級大豆を標準として量的質的に安定供給できる栽培技術、乾燥・調製施設とこれを適正に利用する技術が産地維持の必要条件となる。また2004年産は作況が悪く市場価格が高騰したため、当該年産価格は参考程度とされたい。

具体的データ

表1 各産地の概況

図1 産地の大豆生産者価格

図2 地域産大豆使用豆腐の付加価値と労働分配率

図3 産地の豆腐用大豆の流通販売経路

その他

  • 研究課題名:地域の条件を活かした高生産性水田・畑輪作システムの確立
  • 課題ID:211-a
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:高橋太一
  • 発表論文等:高橋(2006)、流通、日本流通学会18:91-100