マルチプレックスPCR法によるタバココナジラミバイオタイプの簡易識別法

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要約

コナジラミ類のミトコンドリアCOI領域と16SリボソームRNA領域遺伝子に特異的なプライマーを利用してPCR法を行い、その断片長を比較することにより、薬剤感受性が異なるタバココナジラミバイオタイプB、Qとオンシツコナジラミが識別できる。

  • キーワード:マルチプレックスPCR法、タバココナジラミ、バイオタイプ、オンシツコナジラミ
  • 担当:近中四農研・総合的害虫管理研究チーム
  • 連絡先:電話 084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

タバココナジラミBemisia tabaci  (Gennadius)は世界中に分布す る大害虫であり、多くのバイオタイプの存在が知られている。日本でも、薬剤感受性が異なるバイオタイプBとQが広範囲の農作物に被害を及ぼしている。これ ら2つのバイオタイプは形態的識別が困難なため、生産現場において適切な防除を実施するためには、これらを区別することが重要である。そこで、遺伝子マー カーによるタバココナジラミバイオタイプBとQおよび同じ圃場に発生するオンシツコナジラミの3者同時識別法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 0.2mlのサンプルチューブにコナジラミを個体別に入れ、5%Chelex20μl中でプラスチック爪楊枝により磨砕し、Proteinase Kを1.4μl 加えて56.0℃で2時間以上、続いて99.9℃で3分処理した抽出液をPCR法に用いる(1μl/反応)(図1)。このDNA抽出方法は、他の微小な昆虫に対しても利用することができる。
  • 0.2mlのサンプルチューブにアプライドバイオシステムズ社製のPCR用試薬、mtCOI(Cytochrome oxidase subunit I )領域と16SリボソームRNA領域に特異的なプライマー(表1)などを表2に示す割合で混ぜ合わせる。それをPCR用サーマルサイクラーに入れ、96℃で10分後、92℃で1分、46℃で1分、72℃で1分30秒35回繰り返した後、72℃で1分30秒、4℃で保存する。
  • 増幅したサンプルを使って1%のアガロースゲルで電気泳動法を行う。タバココナジラミバイオタイプQでは約530bpと約 270bpに2本、バイオタイプBでは約600bpと約530bpに2本、オンシツコナジラミでは約530bpと約1000bpに2本のバンドが検出さ れ、3種類を明確に識別できる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 各地圃場に発生しているタバココナジラミバイオタイプB、Qおよびオンシツコナジラミが区別できるため、害虫管理に広く活用できる。
  • まれに非特異的なバンドが出るが(図2の白い四角の位置),基本的なバンドが出ていればコナジラミのバイオタイプや種類は区別ができる。
  • 本識別法は他の類似の方法より作業数が少なく、PCR用試薬のみなので安価である。

具体的データ

図1 コナジラミのDNA抽出

 

表1 マルチプレックスPCR法に利用するプライマー配列

 

表2 マルチプレックスPCR法試薬の分量 図2 マルチプレックスPCR法によるバンドパターン(黒バンド)

 

その他

  • 研究課題名:果菜類の新規コナジラミ(バイオタイプQ)等防除技術の開発
  • 課題ID:214-f
  • 予算区分:競争的研究資金(高度化事業)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:三浦一芸、世古智一、千木良敦史(広島大学生物圏科学科)
  • 発表論文等:三浦(2007) 植物防疫 61(6): 315-318.