都市農村交流の促進におけるNPO法人の機能と活動の組織化タイプ

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要約

NPO法人は、公益増進目的で農業農村の機能の活用や促進を図る交流活動の法人化に適する。食育・体験学習活動では交流のインタフェースとして機能しうる。交流諸活動の組織化では「共存」「共生」「協働」の3タイプのプラットフォームとして利用できる。

  • キーワード:NPO法人、都市農村交流、公益性、インタフェース、プラットフォーム
  • 担当:近中四農研・農業・農村のやすらぎ機能研究チーム
  • 連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・営農
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

農業・農村の教育や福祉、文化面の公益的機能を活用した都市と農村の共生や対流への期待や関心が高まっている。他方、機能活用に よる体験や学習、休養や居住に関わる取り組みでは、一律の制度的体制づくりや自律的経済モデル化は困難を伴う。このため、その主体・担い手の一つとして、 公益の増進に寄与する活動を目的とし、事業報告書等の提出や公開により活動の透明性が高く、組織体としての主体性や継続性も期待しうるNPO法人が注目さ れている。
  そこで、まず、公益性をもつ交流の代表的な取り組みである農作業体験や食育に関わる法人の機能や意義を事例に 基づき解明する。次に、交流では、多様な活動や主体間の結合が必要となることから、活動の結合の度合いを弱・中・強の3段階で想定し、その組織化で利用し うるNPO法人の3タイプとその機能や意義を事例に基づき縮約して提示する。

成果の内容・特徴

  • 農作業体験や食育等に取り組むNPO法人は、農家と農作業体験や研修を希望する市民との相互の境界間のアクセスを容易にする交流のインタフェースとして機能している(図1)。ここでインタフェースとは、異なる2つのシステムを仲介し結合するものの意味で用いている。
  • タイプの異なる3事例に基づくと、NPO法人は農家と市民のニーズを接合するモデルを提案し、また窓口、情報発信、需給調整 の機能を果たしている。事例は、生産緑地内で市民の理解・支持の確保と食育のビジネス化を図る団体、緑地保全と農作業体験の機会創出を図る団体、新規就農 支援と食育のビジネス化を図る団体である。
  • NPO法人は、交流活動で必要とされる関係諸活動の組織化ないし法人化でのプラットフォームとして利用できる。活動相互間の結合度合いより「共存」「共生」「協働」タイプを想定し、事例に基づきその社会的意義を整理した(表1)。ここでプラットフォームとは、複数の活動や主体のつながりを支える基盤となる組織ないしシステムもしくは台の意味で用いている。
  • 事例としたのは、共存型では自給に関心をもつ新規参入者や10の米づくりグループ等の独立性の高いグループのコミュニティ、共生型では道 の駅運営による収益で福祉や環境保全への取り組みを行い地域の魅力創出と再生を図る社会企業的団体、協働型では新規就農支援を産官学の分担・連携で行うプ ロジェクト遂行型の団体である。
  • 事例と意義に基づくNPO法人の活動の組織化への活用場面として、共存タイプは食育や環境保全に関わるコミュニティ形成、共生タイプは収 益を農村の地域社会の維持・再生に還元する社会企業的団体の設立や地域協議会組織の法人格取得、協働タイプは就農支援や体験学習に関わる公益性をもつ共同 事業体の設立を想定できる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • NPO法人は公益性を主目的とする非営利団体への法人格付与制度であり、非営利団体であっても、共益団体等であれば一般社団法人(08年12月施行)が選択肢に適する。

具体的データ

図1 NPO法人のインタフェース機能

表1 NPO法人をプラットフォームとしうる諸活動の組織化[法人化]のタイプ

その他

  • 研究課題名:農業・農村のもつやすらぎ機能や教育機能等の社会学的解明
  • 課題ID:421-e
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006-2007年度
  • 研究担当者:加藤克明
  • 発表論文等:加藤(2007)近中四農研農業経営研究(16):58-96