農業生産法人の広域連携による少量多品目野菜の集出荷ビジネスモデル

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要約

農業生産法人の広域連携による野菜の集出荷ビジネスモデルは、少量多品目生産と宅配便を利用した流通による集出荷拠点の分散化、消化仕入れ方式による販売店側の負担軽減、手数料方式による会計処理の簡素化などの運営上の特徴を持つ。

  • キーワード:農業生産法人、広域連携、少量多品目、集出荷、ビジネスモデル
  • 担当:近中四農研・地域営農・流通システム研究チーム
  • 代表連絡先:電話0877-63-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・営農、共通基盤・経営
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

近畿・中国・四国地域の条件不利地域では、生産物の製品差別化と流通方法の工夫によつて事業展開を図る取り組みが散見される。そこで、これまでにない新たな取り組みとして、中山間地域にある3つの農業生産法人(A~C社)が、広域連携によって野菜の集出荷に取り組んでいる徳島県のLLP(有限責任事業組合)・X(表1)を素材に、他の農産物の集出荷形態と比較し、そのビジネスモデルの特徴や運営の要点を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 集出荷形態を簡単に図式化して比較すれば、LLP・Xは「広域連携・集出荷拠点分散型ビジネスモデル」と特徴づけられる(図1)。従来の形態は、生産物の規格化、ロットの確保等のため1拠点に集荷する必要性から、同一地域の取り組みである「地域内連携・集出荷拠点集中型ビジネスモデル」か、広域連携する場合でも米麦類など保存性のある農産物に限定される「広域連携・集出荷拠点集中型ビジネスモデル」であった。
  • LLP・Xの特徴や運営の要点から広域連携・集出荷拠点分散型ビジネスモデルの特徴として、以下を指摘できる。第1に、色、形、大きさ、栽培方法などに特徴がある野菜の少量多品目生産を図っている点である。組合員3法人が生産する品目は、重複するものが少なく、それぞれが生産技術の高い組合員外の生産者に生産を委託することによって、品目拡大を図る仕組みとしている(図2)。また、同一の販売先に、異なる地域から同一品目を供給することがないので、品目毎の規格統一や確認が不要である。さらに、少量多品目化は消費者ニーズの広範な把握にも役立つ。
  • 第2に、流通方法として宅配便を利用し、各組合員が直接取引先に出荷している点である(図2)。組合員間の距離は離れているため、1箇所への集荷は非効率である。流通量が少量であることと、高めに設定された販売価格は宅配便の利用を可能にしている。
  • 第3に、販売リスクの回避を望む小売業には消化仕入れ方式で販売させ、小売業側の負担を軽減している点である。残品は少なく、これによって出荷品目の決定権をLLP・X側に確保し、出荷品目の効率的な組み合わせの遂行に重点をおくことができる。
  • 第4に、販売代金回収をLLP・X組合員A社に一元化し、手数料5%を徴収した後、各組合員に配分する方式としている点である(図2)。手数料収入にすることで、会計処理を簡素化し、事務・会計処理をA社に業務委託する原資としている。

成果の活用面・留意点

  • 本ビジネスモデルは、事業形態としてLLPを条件としているわけではない。素材とした事例は、節税面を重視し、事業形態としてLLPを選択したが、事業の試行段階として契約期間のあるLLPを利用する意義は認められる。しかし、LLPには様々な制約もあるため、本モデルにおいて事業の拡大や運営の効率化を図るためには、株式会社などの法人格を有する事業形態を利用する方が適当である。

具体的データ

表1 LLP・Xの概要

図1 農産物及び販売代金の流れを簡略的に図式した集出荷形態別のビジネスモデル

図2 LLP・Xとその組合員に関する青果物の流通構造と販売の流れ

その他

  • 研究課題名:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
  • 中課題整理番号:211a.4
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:齋藤仁藏
  • 発表論文等:齋藤(2009)農業経営研究、47(2):101-105