サトウキビは窒素多施用条件で栽培しても硝酸態窒素が蓄積されにくい

要約

窒素多施用条件下のサトウキビ栽培では、面積当たりの高い窒素蓄積量が認められる場合においても、飼料作物の安全性の観点から懸念される硝酸態窒素許容限界値(0.2 %)を越える硝酸態窒素は蓄積されにくい。

  • キーワード:サトウキビ、硝酸態窒素、飼料
  • 担当:近中四農研・広域農業水系保全研究チーム(兼:飼料作環境研究チーム)
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:畜産草地、近畿中国四国農業・生産環境(土壌)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

畜産排せつ物に由来する有機質資材や化学肥料の過剰施用による、窒素などの環境負荷が問題となっている。飼料作物として利用できると同時に土壌の窒素を回収できる作物は、窒素循環を促進し飼料自給率を高める見地から有用である。サトウキビはバイオマス量が多いため、窒素を多く蓄積することが期待できる。さらにサトウキビは近年、飼料としての利用が図られており、飼料作物において懸念される硝酸態窒素の蓄積に関する特性を把握する必要がある。一方、製糖用サトウキビ栽培では窒素が多いとショ糖が蓄積しないため、窒素多施用は行われていない。そこで、温暖地の水田転換畑圃場において30~60 g/㎡の窒素肥料を化学肥料で施用する窒素多施用の圃場試験(土壌の全炭素,全窒素含量それぞれ1.65 %,0.11 %)を行い、様々な遺伝背景を持つサトウキビ品種・系統を用いて、サトウキビ植物体における硝酸態窒素と全窒素の蓄積特性を評価する。

成果の内容・特徴

  • サトウキビ系統「KRSp93-19」と対照植物としてバイオマス量が多いことが知られているエリアンサス系統「IJ76-349」およびネピアグラス「メルケロン」(1年目:2006年5月9日定植、10月11日~12日収穫; 2年目株出し栽培:2007年5月9日~11日補植、10月30日~11月6日収穫)のうち(圃場試験I)、ネピアグラスでは施用窒素量に近い水準の窒素が蓄積されるのに対して、サトウキビでは窒素施用量にかかわらず23 g/㎡前後の窒素が蓄積される(表1)。
  • エリアンサスとネピアグラスでは窒素施用量の増加に伴う硝酸態窒素濃度の上昇がみられるのに対して、サトウキビでは硝酸態窒素濃度の上昇はみとめられない(表1:圃場試験I)。
  • 様々な遺伝背景を持つ28のサトウキビ品種・系統、および対照植物のエリアンサス系統「IK76-126」、ソルガム品種「天高」(1年目:2006年4月25日定植、10月18日~11月22日収穫; 2年目株出し栽培:2007年4月24日補植・天高は定植、2007年11月21日~28日収穫; 窒素施用量45 g/㎡/年)のうち(圃場試験II)、飼料作物中の許容限界基準値(0.2 %)を越える硝酸態窒素の蓄積がみとめられた品種・系統はない。対照作物のエリアンサス系統「IK76-126」(2006年)と比較して、サトウキビの硝酸態窒素濃度は低い水準である(図1)。
  • サトウキビ系統の中に窒素蓄積量40 g/㎡を上回るものが見出される(表2:圃場試験IIより抜粋した品種・系統について表示)。圃場試験Iよりも高い水準の窒素が蓄積されるのは生育期間の違いに起因すると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • サトウキビは窒素多施用条件で栽培しても硝酸態窒素を蓄積しにくく、クリーニングクロップと飼料作物の2つの目的で栽培する作物として適している。
  • 示した結果は窒素成分で30~60 g/㎡の硫酸アンモニウムを2年間施用した試験のものであり、窒素連用を続ける場合および堆肥を投入する場合については別途、検討が必要である。
  • 予備試験から硝酸態窒素の蓄積は主に茎部で認められていることから、茎部の硝酸態窒素濃度についてのみ検討している。

具体的データ

表1 窒素多施用がサトウキビと対照植物の乾物重、窒素蓄積量、硝酸態窒素濃度に及ぼす影響

図1 窒素多施用がサトウキビと対照植物の茎の全窒素濃度と硝酸態窒素濃度に及ぼす影響

表2 窒素多施用がサトウキビと対照植物の乾物重と窒素蓄積量に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:草地飼料作における減肥・減農薬の環境対策技術の検証と新たな要素技術の開発
  • 中課題整理番号:214r
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:石川葉子、安藤象太郎
  • 発表論文等:Ishikawa S. et al. (2009) Soil Sci. Plant Nut. 55 (4) : 485-495.