高温登熟条件における水稲の胴割れ発生の品種間差

要約

水稲品種「塩選203号」は高温登熟条件でも胴割れの発生が少なく、胴割れ耐性が高い。一方、「はなの舞」、「ハナエチゼン」、「にこまる」、「ひめのまい」も胴割れ発生が少ないが、出穂後10日間の日最高気温平均値が33°C以上になると発生が増加する。

  • キーワード:イネ、コメ、胴割れ、品種間差、高温登熟
  • 担当:気候変動対応・水稲高温障害対策
  • 代表連絡先:電話 084-923-4100
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、登熟期間中の高温条件による米の品質低下が大きな問題となるなか、胴割れの発生による品質低下が各地で認められており、生産現場においては胴割れ発生防止が重要な課題になっている。胴割れ発生の品種間差については過去に多くの報告がなされているが、登熟気温が比較的低い条件で得られた結果が多く、発生を助長することが知られている登熟初期の高温条件下での品種間差については十分に検討されていない。
そこで、登熟期が高温となる条件において多数品種を用いた栽培試験を行い、高温登熟条件下での胴割れ発生における品種間差を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 登熟期が高温となる瀬戸内地域で栽培した水稲20品種の胴割れ率を調査すると、「双葉」、「ヤマヒカリ」、「藤坂5号」で胴割れ率が高く、「にこまる」、「ひめのまい」、「塩選203号」で低い傾向にある(表1)。しかし、胴割れ率には品種×作期・年次の有意な交互作用が認められ、胴割れ率の品種間差は作期・年次により変動する。
  • 胴割れ率の作期・年次変動を出穂後の気温をもとに整理すると、出穂後10日間の日最高気温平均値が高い条件ほど胴割れ率が高まる傾向にあるが、「はなの舞」、「ハナエチゼン」、「にこまる」、「ひめのまい」は同気温平均値が32°C以下の条件では他品種と比較して低い胴割れ率を示す(図1)。しかし、33°C以上となる作期・年次では胴割れ率の増加が大きく、他品種に対する胴割れ耐性の優位性は明確には認められない。
  • 「塩選203号」は、同気温平均値が32°Cを下回る条件下だけでなく、33°Cを超える高温条件でも胴割れ発生が少ない(図1)。人工気象室を用いて登熟初期に高温処理を行ったポット試験においても同品種の胴割れ発生は少なく、発生を助長させる水浸処理を行っても胴割れ率は低い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、高温登熟条件下でも胴割れ耐性の高い品種の育成を行う際の基礎資料として活用できる。
  • 「塩選203号」は中国に由来するインド型品種である。本研究におけるインド型品種の供試は同品種のみであるが、滝田 (1992) は本研究よりも登熟気温が低い条件において、「塩選203号」が他のインド型品種と比較して胴割れ発生が少ないことを報告している。
  • 本成果における胴割れ判定にはk社グレインスコープを用い、軽微な割れを含むすべての胴割れを対象として調査を行っている。そのため、米穀品位検査における判定基準より厳しく評価しているが、両者の数値間には一般に高い相関関係がある(長田2006)。

具体的データ

 表1~2、図1

その他

  • 中課題名:気候変動下における水稲の高温障害対策技術の開発
  • 中課題番号:210a2
  • 予算区分:交付金、交付金プロ(温暖化適応)
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:長田健二、佐々木良治、大平陽一
  • 発表論文等:1)長田ら(2013)日作紀、82(1):42-48