高温登熟性に優れ、良食味で多収の水稲品種「中国201号」

要約

水稲「中国201号」は温暖地西部において中晩生熟期の粳系統で、高温登熟性に優れ、良食味・多収であり、縞葉枯病に抵抗性で穂いもちにも強い。温暖地西部における主食用品種としての作付けが期待される。

  • キーワード:イネ、高温登熟、中晩生、良食味、多収
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水稲登熟期間中の高温による影響のため、温暖地西部では中生から晩生にかけての品種を中心に白未熟粒が多発するなど、玄米品質が低下している。特に2010年の高温年においては、基幹品種「ヒノヒカリ」の玄米品質が著しく低下した。このため、「ヒノヒカリ」熟期で高温登熟性に優れた良質・良食味品種の育成が喫緊の課題となっている。

成果の内容・特徴

  • 「中国201号」は、縞葉枯病抵抗性を有する良質・良食味品種の育成を目標として、「西海232号」(後の「きぬむすめ」)と「中国178号」との交配後代より育成した粳系統である(表1)。
  • 普通期移植栽培における出穂期および成熟期は、それぞれ「ヒノヒカリ」より1日および2日遅い。温暖地西部では“中生の晩”に属する(表1)。
  • 「ヒノヒカリ」と比較して、稈長はやや短く、穂長は同程度で、穂数は少ない。草型は“偏穂重型”である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子PiaおよびPiiをもつと推定され、圃場抵抗性は葉いもちが“中”、穂いもちが“やや強”である。縞葉枯病には抵抗性で、白葉枯病抵抗性は“やや弱”である。穂発芽性は“やや難”である。耐倒伏性は“やや強”である(表1)。
  • 収量性は「ヒノヒカリ」よりも高く、移植栽培では13%、湛水直播栽培では15%多収である(表1)。
  • 玄米の外観品質は「ヒノヒカリ」より優れ、「にこまる」並である(表1、図1)。高温登熟耐性は“やや強”で、2010年の異常高温年においても、「ヒノヒカリ」や「にこまる」に比べ、玄米品質に著しい低下は認められていない(表1、表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:温暖地以西の生産者等
  • 普及予定地域・普及予定面積:温暖地以西である。広島県で奨励品種に採用される予定(2014年3月に広島県奨励品種審査会で審査予定)で、2014年度は300ha、2015年度は1,000ha、2016年度は2,000haの作付けを計画している。
  • 近畿中国四国地方の14府県の高温耐性品種選定連絡試験の中で検討されている。
  • 耐倒伏性は“やや強”であるが、極端な多肥栽培では倒伏のおそれがあるため、地力にあった適切な肥培管理を行う。また、白葉枯病にやや弱いため、常発地での栽培は避ける。
  • 「中国201号」は2014年2月に品種登録出願予定である。

具体的データ

表1~2,図1

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動プロ)
  • 研究期間:2002~2013年度
  • 研究担当者:出田収、重宗明子、中込弘二、石井卓朗、松下景、春原嘉弘、前田英郎、 飯田修一