大豆のラッカセイわい化ウイルス抵抗性遺伝子の座乗位置

要約

大豆のラッカセイわい化ウイルス(PSV)に対する抵抗性遺伝子は第7染色体上に座乗する。主なPSV抵抗性品種の抵抗性もこの座にあり、近傍DNAマーカーは品種育成における抵抗性品種・系統の選抜に利用できる。

  • キーワード:ダイズ、ラッカセイわい化ウイルス、抵抗性、DNAマーカー
  • 担当:作物開発・利用・大豆品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 0877-62-0800
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・作物機能開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

大豆はラッカセイわい化ウイルス(PSV)に感染すると収量の減少や褐斑粒による品質低下が引き起こされ、大豆の安定生産の妨げとなっている。特に褐斑粒の発生は、生産物の検査等級低下による減益や採種圃場での健全種子生産の障害になるなど問題となっており、生産現場からは抵抗性品種の育成が強く望まれている。これまでの研究により、大豆品種の約半数はPSVに感受性であること、抵抗性品種「ヒュウガ」、「Harosoy」および「つるの卵1号」のPSV抵抗性は優性の1遺伝子に支配されていることが明らかにされている。
そこで、抵抗性品種の育成を効率化するために、PSV抵抗性遺伝子の座乗位置を明らかにして、育種選抜に利用できるDNAマーカーを開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • PSV抵抗性品種「ヒュウガ」と感受性品種「エンレイ」の交雑後代の組換え型自殖系統(HE-RILs)184系統を材料として、PSV抵抗性に関する連鎖解析を行うと、PSV抵抗性遺伝子Rpsv1(Resistance to peanut stunt virus1)は第7染色体のSSR マーカーBARCSOYSSR_07_0315からBARCSOYSSR_07_0321の約190kbpの間に座乗する(図1、2)。
  • BARCSOYSSR_07_0315 からBARCSOYSSR_07_0321の間に新たに開発したSSRマーカー0115C04-3、0115C04-7(表1)は、Rpsv1遺伝子のごく近傍に位置する(図2)。
  • PSV抵抗性品種とPSV感受性品種との交雑後代RILs各15系統を材料として、Rpsv1近傍の遺伝子型とPSV抵抗性を比較すると、両者のパターンは一致する(表2)。このことから、「スズユタカ」、「タチナガハ」、「オオツル」、「タマホマレ」および「フクユタカ」の抵抗性もRpsv1と同じ位置に座乗すると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • Rpsv1遺伝子の近傍DNAマーカーを用いることで、効率的にPSV抵抗性系統を選抜できる。
  • 連鎖解析に用いたSatt540やBARCSOYSSR_07_0321などのDNAマーカーの配列情報や位置情報(Glyma2.0バージョン)は、SoyBase (http://soybeanbreederstoolbox.org/index.php)から入手が可能である。
  • PSV抵抗性の評価は、罹病葉の摩砕液を接種源とした汁液接種法により行った。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:気候区分に対応した安定多収・良品質大豆品種の育成と品質制御技術の開発
  • 中課題整理番号:112f0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:猿田正恭、高田吉丈、山田哲也、高橋浩司、加藤信、小松邦彦、佐山貴司(生物研)、石本政男(生物研)
  • 発表論文等:Saruta M. et al. (2012)Breed. Sci. 61(5):625-630