開発の背景と経緯
これまでに農作業の機械化が進み省力化・軽労化が図られてきましたが、未だに多くの人力作業が残されています。特に、長時間にわたる農作業特有のつらい姿勢での作業は肉体的・精神的に大きな負担となっており、人力作業自体の軽労化が求められています。一方、近年、福祉やロボット関係の分野では、作業者が装着して使用することで作業動作を補助する技術の研究が広がっています。
生研センターでは平成20年度より、これらの技術を取り入れ、農業現場でのつらい人力作業の軽労化に貢献する農作業補助装置の研究を行っており、これまでの調査や基礎試験等を踏まえて農作業補助装置を試作しました。
農作業補助装置(試作機)の概要
- 装置は、作業者の身体に装着するハーネスと、ハーネスを吊り下げる金属フレームからなる簡便な構成となっており、電源等の動力源を必要としません。
- フレームには、股関節、膝関節、足関節があり、作業者は装着したままで立ち姿勢や前屈姿勢ができ、歩行も容易です。
- これらの関節は、その角度が一定より狭まらないため、作業者が前屈姿勢をとると、ハーネスとフレームにより作業者の体が適度に吊下げられ、作業動作を妨げることなく体重の約半分を装置が支えてくれます。
- 前屈姿勢中は装置が体重を支えてくれるので、通常では筋肉の疲労により長時間維持できないような膝を曲げて腰への負担を少なくする姿勢で作業することができます。
- 関節角度の調節により地面に手が届くため、野菜の収穫や除草などの地際の作業ができ、腰のひねり動作も可能なため、収穫物の横方向への移動などを円滑に行うことができます。
- フレームの腰部分にばねを内蔵しており、前屈姿勢での動作に適度な自由度を与えると共に、立ち姿勢に戻る時には上半身を起こす力を補助します。

今後の予定
様々な作業者の体格に合わせられるように調整機能の追加や、軽量化等の改良を行い、実用化を目指します。