プレスリリース
ミカン葉の水ストレスを判定して甘い果実を栽培

- 携帯型の植物水分情報判定装置を開発中 -

情報公開日:2011年9月 6日 (火曜日)

ポイント

  • 園地で作物を直接計測
  • 葉をはさんでスタートスイッチを押すだけで計測可能

概要

農研機構【理事長 堀江 武】生研センターでは、ウンシュウミカンを対象に、非熟練者でも容易に水ストレスを判定することができる携帯型の植物水分情報判定装置の開発を行っています。近年、ウンシュウミカンでは、精密な水管理により樹体に水ストレスを与え、果実の糖度を高める栽培技術が普及していますが、この技術の導入には農業者の熟練を必要としています。この装置は、ミカンの葉の弾性(ヤング率)を計測することにより、間接的に水ストレスを判定することができるものであり、本装置により高品質果実栽培で、かん水管理に必要とされる作物の水ストレスの判定が、園地で葉を採取することなく短時間かつ容易に行えるようになります。現在、装置の試作改良を行っており、今後、実用化に向けて取り組んでいく予定です。

予算

運営費交付金


詳細情報

開発の背景と経緯

  • ウンシュウミカンでは、精密なかん水管理により、果実肥大期の樹体に適度な水ストレスを与え、果実の糖度を高める高品質(高糖度)農産物の栽培技術が普及しています。
  • しかし、これらのかん水管理の多くが、葉や樹体の状態を目視によって観察する方法のため、熟練技術が必要とされ、誤ったかん水タイミングによる収量や品質の低下が問題となっています。また、水ストレスを判定する方法として、葉を採取して高価な圧力容器を用いて計測する方法もありますが、計測に経験が必要であるとともに手間がかかるといった問題があります。
  • そこで、生研センターでは平成18年度から、園地で短時間かつ容易に水ストレスを判定する方法として、ミカン葉の弾性を計測することにより、間接的に水ストレスを判定する方式を提案し、基礎試験等を行ってきました。今回、これらの知見をもとに、携帯型の植物水分情報判定装置を試作しました。

携帯型の植物水分情報判定装置(試作機)の概要

  • 装置は、センサユニット、制御BOX、計測用PCから構成されます(図1)。
  • ミカンの葉をセンサユニットに挿入し(図2)、スタートスイッチを押すと、葉を押す動作を開始し、弾性を計測します。その後、動作を停止し、計測結果を計測用PCに保存します。スタートスイッチを押すと、この一連の動作が自動的に行われます。
  • 葉を押す力が、設定した圧力に達すると装置は自動的に停止するため、ミカンの葉を損傷させることはありません。
  • 計測した弾性の計測結果から水ストレスを判定します。
  • 試作した装置の葉1枚の判定に要する時間は30秒程度です。

想定される本装置の利活用法

園地で、1樹体あたり数枚の葉の計測を行うことで水ストレスを判定します。その水ストレスの状態に応じて、適切なタイミングで必要なかん水の程度を決めることが可能となります。

 

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今後の予定

今後は、栽培現場でのデータを集積しながら、小型・軽量化や取扱性の向上等をはかり、実用化を目指します。