プレスリリース
茶の直掛け栽培用被覆資材の被覆・除去装置実用化に見通し

- 乗用型摘採機を使って被覆作業を楽に -

情報公開日:2014年9月16日 (火曜日)

ポイント

  • 被覆資材の展開と巻取りを乗用型茶摘採機を使って楽に行えるアタッチメント。
  • 従来の手作業による展開と巻取り作業の投下労働時間を大幅に削減できます。

概要

農研機構生研センターとカワサキ機工株式会社は、農業機械等緊急開発事業(以下、緊プロ事業)において、茶の直掛け栽培用被覆資材の被覆・除去装置を開発しました。

開発した装置は、乗用型茶摘採機に装着するアタッチメントです。かぶせ茶などの栽培では、茶葉の品質を高めるため、収穫前の1~2週間程度、茶樹に遮光資材を直接被覆しますが、重い遮光資材の運搬や約2mおきに器具で資材を固定する作業、収穫繁忙期に資材を巻取り回収する作業は煩雑で重労働でした。

そこで、乗用型茶摘採機に搭載して被覆資材を展開しながら茶樹を被覆、加えて被覆資材を巻取りながら除去する装置をカワサキ機工株式会社と共同開発しています。

これまでは手作業で行われていた被覆作業や除去作業を機械化することで、大幅な省力化が期待でき、直掛け被覆栽培の規模拡大にも寄与します。

今後、共同開発メーカーにより装置の実用化を進めます。

関連情報

予算:運営費交付金

特許:出願中(4件)
( 特願 2013-102668、特願 2014-156762、特願 2014-156882、特願 2014-156849)

詳細情報

開発の背景と経緯

近年、国産茶の高付加価値生産の手段として、収穫直前の1~2週間程度、茶樹に遮光資材を直接被覆する栽培法が普及しています。茶の新芽を直射日光から遮ることにより、旨味が増し渋みが少ないお茶を栽培することができます。しかし、資材を茶樹に被覆する作業や除去する作業は、従来、手作業で行われ、特に資材除去作業は収穫繁忙期と重なり多くの労働力を必要とすることから、機械化による省力化が強く求められていました。そこで農研機構生研センターとカワサキ機工株式会社は、緊プロ事業として平成24年度から直掛け栽培用被覆資材の被覆・除去装置の開発に着手し、このたび実用化の見通しを得ました。平成24年度は被覆資材を油圧駆動で円滑に巻き取るための基本構造を開発し、平成25年度は機構の簡略化と取り扱い性向上の改良を進めました。本年度は、奈良県農業研究開発センター大和茶研究センター、京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所、静岡県農林技術研究所茶業研究センターによる実証試験を進めています。

開発機の概要

  • 開発中の直掛け栽培用被覆資材の被覆・除去装置は、乗用型茶摘採機に装着するアタッチメントです。資材を展開し茶樹に被覆する展開アタッチメント(図1)と、資材を巻取りながら除去する巻取りアタッチメント(図2)で構成されます。
  • 展開アタッチメントは、ロール状に巻かれた心棒のない状態の資材を保持しながら動力を使わずに展開し茶樹に被覆します。
  • 巻取りアタッチメントは、油圧モータで回転する巻取り軸に資材を巻きつけます。巻取り用油圧モータは負荷にともなって回転速度を低下させ、資材に適度な張力を維持しながら一定の力で巻き取ります。弧状のガイドフレームは、巻取り時の資材の左右方向の偏りを低減させます。ロール状に巻き終えた資材は巻取り軸から引抜いて取り外し、次回の展開作業にそのまま使うことができます。
  • 開発機で扱える被覆資材は、幅が2.2m以下、長さが50mまでの寒冷紗で、産地で一般的に利用されているものです(表1)。また、京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所が開発した資材固定にピンチを使わない新方式資材を利用することで、作業能率を高めることができます。
  • 静岡県農林技術研究所茶業研究センターの圃場で新方式資材を使用して作業能率を調査したところ、資材展開作業に要する投下労働時間は10aあたり1.34人時、資材巻取り作業は同1.39人時でした。これは同一圃場での慣行作業の投下労働時間を、展開作業で34~69%、巻取り作業で44~78%、それぞれ削減できました(表2)。

今後の予定・期待

現在、奈良県、京都府、静岡県において実証試験を実施し、作業能率や取扱い性等の向上を図り、平成27年の市販開始を目指します。

なお、平成26年9月30日に「平成26年度 チャの直掛け栽培用被覆資材の被覆・除去装置に関する現地検討会」を開催します。詳しくは農研機構または新農機(株)ホームページの開催案内をご覧下さい。

農研機構ホームページ
http://www.naro.affrc.go.jp/event/list/2014/08/053790.html

新農機(株)ホームページ
http://www.shinnouki.co.jp/info/h26_09_30.html

用語の解説

直掛け栽培 : 被覆資材を棚や骨組みを使わず樹冠面に直接掛ける遮光栽培法。直がけ栽培、直接被覆栽培ともいう。

新方式資材 : 被覆資材を茶樹に固定する方法は、一般的には資材両側(長辺方向)に約2m間隔で取り付けたピンチ(洗濯バサミに類似)で茶樹の枝を挟む。一方、京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所が開発した新方式資材はピンチを使わず、資材外周部に通したロープを引き絞るようにして茶樹の樹冠部に資材をかぶせ、畝の両端部および中央部でロープをペグで地面に固定する。

被覆資材展開アタッチメントによる作業の様子

資材巻取りアタッチメントによる作業の様子

表1 主要諸元