プレスリリース
(研究成果)晩生で多収の極良食味水稲新品種「あきあかね」

情報公開日:2018年6月26日 (火曜日)

ポイント

  • 北陸地域の主力品種である「コシヒカリ」より収穫期が遅い、晩生水稲新品種「あきあかね」を育成しました。収穫時期がほぼ同じである「あきだわら」より標肥で2%程度、多肥で5%程度少収ですが、大粒で玄米の外観品質が良く、炊飯米の食味は「コシヒカリ」並の極良食味です。業務用に適した品種として新潟県で普及の取り組みが進められる予定です。

概要

農研機構は、北陸地域の主力品種である「コシヒカリ」より収穫期の遅い晩生水稲新品種「あきあかね」を育成しました。中生の「コシヒカリ」よりも収穫は2週間程度遅くなり、十分に作期分散を図れます。収穫時期がほぼ同じ「あきだわら」に比べて標肥で2%程度、多肥で5%程度少収ですが、大粒で中食・外食実需者からの評価が高く、玄米の外観品質は「あきだわら」よりも優れます。また、炊飯米の食味は「コシヒカリ」並の極良食味です。

新潟県で業務用に適した品種として普及の取り組みが進められる予定です。

予算:運営費交付金、農林水産省委託プロジェクト「革新的技術開発・緊急展開事業(うち先導プロジェクト)」

品種登録出願番号:第32669号(平成29年12月19日出願、平成30年5月21日出願公表)


詳細情報

新品種育成の背景と経緯

稲作経営の大規模化が進んでおり、移植時期や収穫時期を分散できる品種に対する要望が高まっています。また、多収により60kg当たり生産コストを低減でき、外食や中食への需要を満たせる品種が求められています。晩生品種としては「あきだわら」の普及が進められていますが、業務用の実需者からは(とう)(せい)・炊飯歩留まりの向上が期待できる大粒で、玄米の外観品質に優れる品種が要望されていました。これらに対応するため、「コシヒカリ」より晩生で、収量性が高く、大粒で玄米の外観品質に優れる極良食味品種「あきあかね」を育成しました。

「あきあかね」の特徴

1)収量性に優れる「収7388」を母とし、極良食味品種「中部109号」を父とした交配から育成した品種です。

2)育成地(新潟県上越市)での出穂期は、「あきだわら」とほぼ同じです。成熟期は「あきだわら」より3日早くなります(表1)。

3)稈長は「あきだわら」と同等、穂長は「あきだわら」よりも短く、穂数はともに「あきだわら」よりも多く、草型は「中間型」です(表1、写真1)。

4)育成地での玄米収量は「あきだわら」に比べて標肥栽培で2%程度、多肥栽培で5%程度劣ります。

5)千粒重は「あきだわら」よりも2g程度大きく、玄米外観品質は「あきだわら」よりも良好であり、中食・外食実需者から高く評価されています(表2、写真2)。食味は「コシヒカリ」並の極良食味です(表3)。

6)耐倒伏性はやや強で、葉いもちの抵抗性は中、穂いもちの抵抗性はやや強、縞葉枯病には罹病性、白葉枯病抵抗性は中です(表4)。

7)栽培適地は、「あきだわら」の栽培が可能な北陸から関東以西です。

栽培上の留意点

1)縞葉枯病、白葉枯病に弱いため、常発地での栽培は防除を徹底してください(表4)。

2)過剰な施肥は倒伏および玄米タンパク含有量の増加による食味の低下を招きますので、地力にあわせた適切な肥培管理を行ってください。

品種の名前の由来

晩生で収穫時期が遅く、あきあかね(赤とんぼ)が色づく頃に収穫できることから命名しました。

今後の予定・期待

1)平成30年度より新潟県の業務用米として種子生産と普及の取り組みが始まっており、初年度は約70ha、数年後にはさらなる普及が見込まれています。
2)ご飯の食味が良く、大粒で搗精・炊飯歩留まりの向上が期待できることから、中食や外食をはじめとする様々な用途への利用が期待できます。

参考図

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