プレスリリース
(研究成果) ダッタンソバ新品種「満天きらり」への他品種の混入防止マニュアルを作成

- 「苦くない」製品生産のための、栽培から製造までの注意点 -

情報公開日:2018年1月22日 (月曜日)

ポイント

農研機構が開発したダッタンソバ新品種「満天きらり」は健康に良いとされるルチン1)を多く含み、また「苦みがほとんどない」品種です。今回、「満天きらり」の特長を保った製品を安定生産するための、他のダッタンソバの混入防止マニュアルを作成しました。

概要

harc20180122_press01ダッタンソバ新品種「満天きらり」は、ルチン分解酵素をほとんど持たない、世界初のダッタンソバ品種です。「満天きらり」は従来のダッタンソバと比較して、(酵素によるルチンの加水分解がないため)製品化した際に、苦みがほとんど無いのが大きな特徴です。

ダッタンソバの栽培履歴がある畑や製粉履歴がある機械などにおいて、「満天きらり」の種子や粉に、他のダッタンソバ(ルチン分解酵素を持っている品種)がわずかでも混入するとルチンの分解が進み、苦みが生じて品質が低下するので、他のダッタンソバやソバからの隔離が必要です。このため農研機構は、生産者、製粉業者、食品加工業者向けに、栽培から収穫、製粉、食品製造までの各段階での「満天きらり」への他のダッタンソバ品種の混入を防止するためのマニュアルを作成しました。

入手方法

マニュアル(PDF形式)は、農研機構のウェブページからダウンロードして利用できます。

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/074428.html

また、冊子体のマニュアルをご用意しています(200名様先着順)。

関連情報

予算 : 平成24年度補正予算「機能性をもつ農林水産物・食品開発プロジェクト(課題名:ルチン高含有ダッタンソバ「満天きらり」を用いた脂質代謝改善効果のある加工食品の開発)」

その他

本資料は、農業技術クラブ、道政記者クラブ、札幌市政記者クラブに配付しています。

※農研機構(のうけんきこう)は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネーム(通称)です。新聞、TV等の報道でも当機構の名称としては「農研機構」のご使用をお願い申し上げます。


詳細情報

背景と経緯

ダッタンソバは、健康に良いとされるルチンを多く含む(通常のソバの100倍程度)一方で、ルチンの分解酵素も極めて多く含んでおり、ルチンが分解して強い苦みが生じるという特徴がありました。農研機構が開発した「満天きらり」は、ルチン分解酵素をほとんど含まないことにより苦みを低減させた、画期的なダッタンソバ品種で、北海道などでの導入が進んでいます。しかし、その栽培から収穫、製粉、食品製造に至る過程で他のダッタンソバがわずかでも混入すると、「苦みが少ない」という特徴を失ってしまうという問題がありました。

このため農研機構は、栽培から製造までの各段階において、他のダッタンソバが混入するリスクを洗い出し、混入防止に必要な注意点をマニュアルとして取りまとめました。

内容・意義

本マニュアルでは、「満天きらり」100粒に他のダッタンソバが2粒混入するだけで「普通の苦いダッタンソバ」と同程度に苦くなってしまう、という実験例から混入防止の重要性をまず示しています。また、ダッタンソバの栽培履歴がある畑や製粉履歴がある機械などを例に栽培から製造までの各段階における、他のダッタンソバとの混入防止の注意点について、以下の項目に分けて解説しています。

(1)栽培時 : 種子の選定、畑の選定、他のダッタンソバやソバからの隔離、播種機械の掃除

(2)収穫、乾燥・調製時 : 混入個体の抜き取り、収穫時の注意、乾燥機、乾燥施設の掃除、磨き・ふくろ詰め時の注意

(3)製粉、食品製造時 : 製粉時の注意、食品加工時の注意

今後の予定・期待

本マニュアルの利用により、生産者の方々が安心して「満天きらり」を生産できると期待されます。また、本マニュアルにより他のダッタンソバが混入しやすい作業工程が明らかとなり、製粉会社や食品加工業者の方々には、混入防止策の検討に役立つと期待されます。

用語の解説

1) ルチン
ポリフェノールの一種で、ソバの代表的な機能性物質のひとつです。穀物ではソバのみが含有するとされています。ヒト介入試験にて毛細血管を強化する効果や脂質代謝の改善効果が報告されています。