プレスリリース
焼酎醸造適性が優れ大粒で多収の二条大麦新品種「キリニジョウ」を育成

- 九州沖縄農業研究センター開発品種 -

情報公開日:2007年1月26日 (金曜日)

新品種名

「キリニジョウ」(二条大麦農林24号)
-焼酎醸造適性が優れ大粒で多収の二条大麦新品種-

 

 


詳細情報

育成のねらい

食用及び焼酎用大麦の需要拡大に伴い、九州の焼酎醸造会社では特徴のある商品開発のため、契約栽培等により地域内での原料用大麦の生産確保に取り組んでいますが、特に焼酎醸造用二条大麦については供給が不足し、焼酎醸造会社からは南九州に適した品種の開発が要望されています。
そこで、暖地での栽培適性と収量性に優れ、焼酎醸造に適した品質を持つ二条大麦品種を育成しました。

 

来歴の概要

「キリニジョウ」は、多収、短稈、良質、縞萎縮病抵抗性を育種目標として、1991年度に「西海皮48号/羽系 89-61」の交配を行い、選抜固定を図り育成した焼酎醸造用二条大麦品種です。
2006年に、栽培が予定されている地域のシンボルである霧島にちなみ「キリニジョウ」と命名しました。

 

新品種の特徴

  • 並性の二条大麦(皮麦)で、「ニシノホシ」並の早生種です。
  • やや短稈で穂長はやや短く、穂数はやや多く、耐倒伏性は強い。
    • 「ニシノホシ」に比べ千粒重は大きく多収で、容積重も大きいです。
  • 大麦縞萎縮病ウイルスのI型系統には強いが、III型系統には罹病します。
    • うどんこ病には強く、赤かび病には中程度、穂発芽性はやや難で穂発芽しにくいです。
  • 軟質で精麦白度は高く精麦加工適性は良いが、「ニシノホシ」に比べ欠損粒の発生はやや多いです。
  • 麹の消化性と糖化性は良く、アルコール収得歩合は高く、焼酎醸造適性は優れています。焼酎の官能評価では甘み等に特徴があります。

 

今後の展開(普及の見通し)

暖地の平坦地及び中間地に適し、焼酎醸造用として宮崎県で普及予定です。

※ 「キリニジョウ」は、農林水産省委託プロジェクト「食糧自給率向上のための21世紀の土地利用型農業確立に関する総合研究」等の成果で、種苗法に基づく品種登録出願中です。

 

問い合わせ先(育成機関)

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
九州沖縄農業研究センター
筑後研究拠点 小麦・大麦育種ユニット 担当者:河田尚之
電話:0942-52-3101

 

参考データ

「キリニジョウ」の系譜
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「キリニジョウ」の特性
kirinijyou2.png

 

「キリニジョウ」の草姿、穂と穀粒
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左:「キリニジョウ」、右:「ニシノホシ」

 

用語解説

二条大麦と六条大麦:
大麦には穂の形の違いにより、二条と六条があります。
穂を上から見ると6方向に麦の実があり、これが6つとも実るのを六条大麦といい、2方向にしか実が成長しないのを二条大麦と言います。
六条大麦は古くから日本の主食の1つとして利用されてきましたが、二条大麦は明治以降にビール原料として栽培され、現在では焼酎原料としても利用されています。

裸麦と皮麦:
大麦には、小麦のように脱穀すると穀皮が取れる裸麦と穀皮が取れない皮麦があります。
大麦は大別すると、ビールや焼酎醸造用に利用される並性の二条皮麦、食用や麦茶に使われる六条皮麦、味噌や食用に利用される渦性の六条裸麦があります。

精麦加工適性(白度、欠損粒率):
大麦を焼酎醸造原料に利用する場合、搗精により穀皮や糊粉層を取り除き精麦にします。
この精麦のしやすさに係る品質を精麦加工適性と言います。
焼酎原料としては、胚乳が柔らかく軟質で澱粉含量が高いこと、穀皮や糊粉層が均一に搗精され精麦の「白度(白さ)」が高いこと、搗精により胚乳が砕ける割合である「欠損粒率」が低く均一な精麦の歩留が大きいことが求められます。

焼酎醸造適性:
焼酎醸造は麦麹を加水・加熱し酵母を加えて1次もろみを作り、さらに麦、米、サツマイモなどの澱粉原料と酵母を加えて2次もろみを作り、麹菌による糖化(澱粉をブドウ糖へ分解)とアルコール発酵を行った後に蒸留します。
この醸造工程では、麹原料の消化性や糖化性、さらに最終的にはアルコール収得率(アルコール発酵の良否と収量)や味・香りなどの官能品質が良いことが求められ、これらを総じて焼酎醸造適性と言います。

麦麹:
麦を蒸して冷却してから麹菌の胞子を散布してよく混ぜ合わせ、約40時間ほどかけて麦麹を作ります。

容積重:
原麦品質の指標の1つで、穀粒の充実度合いを1リットル当たりの重量で示すものです。
二条皮麦では、通常は700g以上の値となるが、登熟不良や倒伏などにより粒の充実が悪い場合は700g以下となり、精麦品質や澱粉含量等の醸造品質も低くなる傾向があります。

オオムギ縞萎縮病:
赤かび病やうどんこ病と並ぶ大麦の重要病害の1つ。
糸状菌により媒介される土壌伝染性のウイルス病で、薬剤防除が困難なことから抵抗性品種の作付けが重要です。
このウイルスの病原性は変異し易く、九州においても従来から発生しているウイルス系統(I型)に加え最近では、III型が発生し始めています。

ニシノホシ:
九州沖縄農業研究センターが平成9年に開発した焼酎醸造及び食用の二条大麦です。
早生で、短稈、多収、オオムギ縞萎縮病(I型)とうどんこ病に対する複合抵抗性を有しています。
また、精麦と醸造適性ともに極めて優れた焼酎醸造及び食用品種です。

穂発芽性:
立毛中の成熟期に子実が発芽する特性。
穂発芽すると胚乳の分解が進むため、精麦品質等が著しく低下する。
ニシノホシなどの穂発芽性はやや易で穂発芽性に対する抵抗性が弱いため、成熟期の長雨により穂発芽する危険性があるが、キリニジョウはやや難の穂発芽性であり穂発芽の危険性は極めて少ないです。