九州沖縄農業研究センターが代表となって取り組む4つの課題
1.北部九州における稲麦大豆多収品種と省力栽培技術を基軸とする大規模水田高度輪作体系の実証
日本で最大の二毛作水田地帯である北部九州地域(佐賀県、福岡県)において大規模経営にも適用しうる省力で低コストな生産技術体系の現地実証を行います。キーテクノロジーとして、地下水位制御システム(FOEAS)の圃場において水稲、二条大麦の多収品種や倒れにくく密植に向く大豆品種を活用し、新しい資材を用いた湛水直播、汎用播種機を活用した乾田直播栽培技術の組み合わせにより、大幅な省力化、低コスト化を目指します。稲、麦、大豆のそれぞれの作物について生産物の生産コストの大幅低減を実証するととともに、新品種について実需者の評価を行い流通ルートの開拓を目指します。
2.暖地における原料用かんしょと加工用露地野菜の大規模機械化生産体系の確立
かんしょ(サツマイモ)および冷凍加工用ホウレンソウの全国有数の産地である南九州(宮崎県)の畑作地域において、経営規模の拡大を可能にする省力技術体系の現地実証を行います。キーテクノロジーとして、サツマイモの苗作りや移植作業、ホウレンソウの収穫作業など、これまで手作業に頼っていた作業の機械化を実現するとともに、ICT(情報通信技術)を活用した生産管理により省力化、低コスト化を目指します。
3.九州における飼料生産組織、TMRセンター、子牛育成センターが連携する地域分業化大規模肉用牛繁殖経営の実証
日本有数の肉用牛(繁殖牛)産地である鹿児島県大隅地域において、自給飼料の生産、調製や牛の繁殖、育成管理を地域内で分業化することで、飼料の安定供給と大規模化に対応した牛の飼養技術の現地実証を行います。キーテクノロジーとして、飼料作物の年間を通じた効率的栽培、高品質サイレージ(発酵粗飼料)の製造技術、地域の食品産業から出る食品副産物を利用したTMR(混合飼料)製造技術、ICT(情報通信技術)を活用した繁殖管理技術を組み合わせ、地域ぐるみで肉用牛繁殖経営の発展を目指します。目標として、飼料作物栽培では単収向上と飼料原料費の低減、繁殖牛の分娩事故率の低減を目指します。
4.サトウキビの安定・多収栽培技術の実証と高バイオマス量サトウキビの生産性評価
南西諸島(鹿児島県、沖縄県)において問題になっているサトウキビの干ばつ被害を軽減するため、効率的灌水等による安定・多収栽培技術の現地実証を行います。実証試験は水資源環境の異なる複数の島で実施し、キーテクノロジーとして、限られた水を有効活用するための土壌水分モニタリング技術や保水効果を持つ有機物(堆肥や収穫残渣)の利用技術の効果を検証します。また、干ばつに強く、多収な高バイオマス量サトウキビについて、現地適応性と製糖技術の検討を行います。目標として、効率的灌水による収量増加と機械化体系の導入による作業時間の削減を目指します。高バイオマス量サトウキビでは、収量の大幅増を目指すとともに、高バイオマスサトウキビ向きの製糖方法を検討します。