プレスリリース
極早生で耐倒伏性と耐病性に優れたエンバク「K78R7」(商品名:アーリーキング)を開発

- 自給飼料の端境期に安定供給を図ります -

情報公開日:2014年9月29日 (月曜日)

ポイント

  • 農研機構九州沖縄農業研究センターとカネコ種苗株式会社は、夏播き用エンバク極早生品種「K78R7」(商品名:アーリーキング)を共同開発しました。
  • 「K78R7」は、耐倒伏性や病害抵抗性を確保しつつ、多収性を実現しました。
  • 農家圃場での試験栽培でも他品種と比較して安定多収を示し良好な成績が得られています。

概要

  • エンバクの夏播き・年内収穫栽培は、自給飼料の端境期である冬季に牧草を供給できる栽培体系として広く普及していますが、安定生産のため、年内に収穫できる極早生性に加えて多収性と耐倒伏性を両立する品種が求められていました。
  • 「K78R7」は、「九州16号」と比較して、出穂の早さがやや遅く、草丈が高いですが、耐倒伏性は同程度で、収量性が並かやや多収です。また、多収性で広く普及してきた「既存品種A」との比較では、出穂の早さ、草丈は同程度で、収量性は並かやや高く、耐倒伏性は明らかに優れ(表1、図1、写真1)、安定多収に貢献できます。
  • 「K78R7」は、冠さび病や葉枯性病害の病害抵抗性にも優れ、一部の地域で近年、問題になっているひょう紋病の病害程度も低くなっています(表2)。
  • 九州、関東地域を中心に、22カ所の農家圃場での試験栽培を展開し、大きな問題は指摘されませんでした。収量調査を実施した鹿児島県や群馬県では、育成機関による試験結果と同様に多収性と耐倒伏性で良好な成績が得られています(図2、写真2)。
  • 2014年から種子の流通が始まり、カネコ種苗株式会社から「アーリーキング」の商品名で販売されています。本品種は関東から九州を中心に、既存の極早生品種を栽培できる地域で利用できます。

関連情報

種苗法に基づく品種登録出願:出願番号 第28185号


詳細情報

写真1 倒伏に強い「K78R7」(右側)

図1 9月上旬播種での収量性

表1.エンバク「K78R7」の夏播き栽培(9月上旬播種)における生育特性

表2.エンバク「K78R7」の夏播き栽培における病害程度

図2 現地試験(農家圃場)での収量性と倒伏程度

写真2 鹿児島県現地試験地での倒伏発生状況

用語解説

1)エンバク(燕麦、学名:Avena sativa L.)
イネ科カラスムギ属の一年草。オートムギ、オーツ麦とも呼ばれます。海外ではオートミールなど食用にも用いられます。冷涼な環境でよく生育し、日本では牧草(青刈、サイレージ)としての利用のほか緑肥やクリーニングクロップとしても利用されます。日本における栽培面積は52,000ha(2013年)で、そのうち飼料用としては7,620ha、九州では飼料用として5,410haの作付けがあります。

2)夏播き・年内収穫栽培
エンバクの極早生品種を8月末から9月に播種して、年内に出穂させ収穫する栽培法です。短期間に生育するエンバクの特質を利用し、晩夏から初冬の穏やかな気候を利用する栽培法として1970年代後半から拡がりをみせ、飼料用トウモロコシや早期水稲の後作として定着しています。

3)冠さび病
エンバクの重要病害の一つです。激発すると、栄養価の低下や減収に繋がります。

4)ひょう紋病
日本では2011年に確認された病害で、関東地域の一部で多発しています。