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そのまま食べてはもったいない! クッキングトマトの世界

いろいろな雑誌やメディアの" 好きな野菜ランキング" で上位を獲得しているトマト。お店には味はもちろん、色や形、サイズもさまざまなトマトが並びます。その気軽さからついつい生で食べてしまいますが、加熱調理をすることでさらにおいしくなるトマトもあるんです! 焼いたり、煮たり、ソースにしたりと楽しみ方も多種多様。今回は農研機構で育成された加熱調理向き「クッキングトマト」をご紹介します。

日本人の1日の摂取量はミニトマト2個程

好きな野菜ランキングでは上位に入り、スーパーマーケットなどでも大きく売り場が設けられているトマトですが、日本で食べられている量は世界平均の6割に満たず、消費量1位のトルコと比べるとなんと約10分の1! 日本人1人が1日に食べる量はミニトマト2~3個程度という計算になります。

消費量の多い国では加熱調理が主流

日本では大玉品種やミニトマトなど、ほとんどが生で食べられているのに対し、消費量の多い国ではトマトの多くが加熱調理されています。特にトマトをよく食べる地中海地方の家庭では、台所に自家製トマトソースを大量にストックしているほどだそう。イタリア料理など西洋料理の普及に伴い、日本でも加熱調理したトマトを食べる機会が増えています。

トマトの可能性広がる!話題の「すずこま」

しかし実際に缶詰などを使わずにトマトを加熱調理してみたら、水っぽくなった、煮崩れしたなんて経験はありませんか? 日本のトマトの多くは生食用で、加熱調理には適していません。そこで誕生したのが、加熱調理向きクッキングトマト。中でも話題のクッキングトマト「すずこま」について、次のページではその魅力と、気になるレシピをご紹介します。

国別トマトの消費量

すずこま徹底解剖

これまで日本で栽培されてきたトマトの多くは、生食用だそう。水分が多くやわらかい食感、甘みの強いものが好まれる傾向にあると言います。一方で加熱調理向きクッキングトマトは、生で食べてもジューシーではなく、それほど甘みもないため、あまりおいしくはありません。しかし加熱することで驚きの味わいに! うま味が増し、料理にこくが生まれます。

リコピン含量多め

熱調理をしてもみずみずしい赤色が魅力の「すずこま」。この赤みのもとは、抗酸化作用を持つとされるカロテノイド色素リコピンです。上図の通り、クッキングトマト(すずこま)は機能性成分であるリコピンを、生食用トマト(桃太郎ヨーク)よりも多く含みます。またリコピンは油に溶けやすいため、炒めたり焼いたり、バターやオリーブオイル、油を使った料理として摂取すると吸収が良くなるとされています。

※発表文献等:プレスリリース(2011 年10 月7 日)/ 低段密植・養液栽培用の初のトマト品種「すずこま」
「すずこま」は、農研機構と全国農業協同組合連合会の共同育成品種です。

広がる料理のレパートリー

クッキングトマトは水分が少ないため、煮ても焼いても、揚げても、そのうま味が損なわれません。さらにドライトマトや、蒸し料理なら、ギュッと詰まったトマトそのものの風味を楽しめるでしょう。うま味と酸味、甘みのバランスが良く、肉や魚との相性も抜群のトマトは、おなじみの洋食はもちろん、中華や和食、さまざまな料理に取り入れやすいのも魅力。主食におかず、スープにデザート、調味料にまで活用できるから、料理のレパートリーが広がります。

年間通して食べられる

「すずこま」よりも一足早く誕生したクッキングトマト「にたきこま」は、日持ちの良い大玉トマトです。しかし8月前後の限られた期間しか収穫できず、ハウスや温室を利用した周年栽培に向いていません。そこで、室内での栽培も可能な「すずこま」が育成されました。「すずこま」の登場で「にたきこま」の収穫が難しい春から初夏、晩秋以降にもクッキングトマトを食べられるようになりました。

大玉の「にたきこま(写真)」は、加熱しても余分な水分が出ないため、実をくりぬいて作る「詰め物料理」にもピッタリ。「すずこま」同様、リコピン含量が多いのも魅力です

アレンジいろいろ♪ひと手間レシピ

茹でてよし、煮込んでよし、焼いてよしのクッキングトマトですから、
そのレシピは無限大!
さらにアレンジの幅を広げるクッキングトマトの簡単" ひと手間" 加工法と、活用レシピをご紹介します。

監修:西堀すき江(東海学園大学)

丸ごとトマトでインパクト大の「洋風おでん」

■ 材料/2 人分

  • クッキングトマト...4 個
  • ベーコン...40g
  • ブロッコリー...4 房
  • 固形コンソメ...1個
  • 水...300ml
  • ローリエ...2 枚
  • 粒こしょう...5 粒
  • A[塩...少々 こしょう...少々]
  • パセリ...1g

■ 作り方

  • ブロッコリーは食べやすい大きさに切り、下茹で。
  • 鍋に水と固形コンソメを入れ、2~3cm に切ったベーコン、丸のままのトマト、粒こしょう、ローリエを入れる。約10分煮込み、ブロッコリーを加える。
  • Aで味を調える。
  • トマトの皮を除き、パセリを散らして器に盛る。

トマトピューレで作る定番「海老チリ」

トマトピューレは、クッキングトマトを乱切りにし、厚手の鍋で混ぜながら煮込みます。5 分ほどで、好みの硬さになったら出来上がり。固形スープの素を入れるとコクが出ます。

■ 材料/2 人分

  • エビ...200g
  • 酒...50ml
  • 青ネギ...30g
  • ニンニク...1 片
  • 油...大さじ1
  • トマトピューレ...100g
  • ケチャップ...大さじ1 1/2
  • 豆板醤...小さじ1/2

■ 作り方

  • ネギとニンニクをみじん切り。
  • エビの殻と背わたを取って水洗い。酒で洗うようにもむ。
  • フライパンに油、ニンニクを入れて炒める。
  • ニンニクの香りが出たら青ネギを入れて炒める。
  • エビを入れて少し火が通ったら豆板醤を入れる。
  • トマトピューレを入れて水気がなくなってきたらケチャップで味を調える。

「ドライトマトのもちっとピザ」

ドライトマトを作るには、オーブン乾燥法や自然乾燥法があります。クッキングトマトのゼリー状の部分を除いて5mm幅の輪切りにし、下準備OK !(丸1)

【オーブン乾燥法】

クッキングシートを敷いて丸1を並べる。110°C のオーブンで1時間30分加熱。ムラのないよう20分ごとに位置を変える。※自然乾燥法はレシピ集IIをチェック!

■ 材料/2 人分

  • 餅...120g(市販の餅2 個)
  • トマトピューレ...大さじ1
  • オリーブオイル...10g
  • ブロッコリー...20g
  • タマネギ...1/8 個
  • ハム...10 g
  • ピザ用チーズ...30g
  • ドライトマト...10g

■ 作り方

  • 耐熱容器に水でぬらした餅とピューレを入れ、軽くラップで覆う。レンジ500wで1分加熱後、混ぜ合わせる。餅が硬い場合は裏返して30秒加熱。
  • ブロッコリーは小房にして茹で、ハムとタマネギは細切り。タマネギはレンジで30秒加熱する。
  • フライパンにオリーブオイルを熱して、1の餅を丸くなるように薄くのばして焼き、焦げ目がついたら裏返して両面焼く。
  • 焼けた餅の上に2の具、ドライトマト、チーズをのせ蓋をする。チーズが溶けたら完成。
もっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

広報誌「NARO」No.11 掲載記事