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世界が恋する、日本のいちご「恋みのり」

世界が恋する、日本のいちご「恋みのり」

NHKエデュケーショナルが制作するWebサイト「みんなのきょうの料理」のHPにイチゴ「恋みのり」を使ったスイーツのレシピが公開されました。また、NHK総合「ごごナマ」にて放送されました。

ムラヨシマサユキの恋みのりスイーツレシピ

「恋みのり」は、農研機構が育成したイチゴの新品種です。甘く、美味しく、香りも強いなど優れた特徴があります。そのまま生で召し上がるのはもちろん、Webサイトに掲載のレシピにもチャレンジしてご賞味いただければ幸いです。

ところで、イチゴ生産者にとって、「恋みのり」は、とても省力的に生産できる栽培しやすいイチゴです。そのため、今、九州を中心に生産が急拡大しています。また、果実が傷みにくく日持ちするため、輸送に日数がかかる輸出にも向く品種なのです。本編では、このような生産・流通上のメリットについて紹介します。

動画で見たい方はこちらを御覧ください。

動画 : 大粒で収穫・調製作業の省力化が可能な多収イチゴ品種「恋みのり」

1.「恋みのり」の誕生

イチゴの国内生産は近年減少傾向にありますが、その大きな原因の一つが、栽培管理、収穫、調製(選別やパック詰め)などに要する労働時間が特に長いことです(年間2,000時間/10a)。

そこで農研機構は、省力的に生産でき、大粒で収量も多い品種の育成に取り組みました。その結果出来たのが新品種「恋みのり」です。農研機構 九州沖縄農業研究センターで生まれました。育成者は、曽根一純、沖村 誠、木村貴志、北谷恵美、遠藤みのり、藤田敏郎の6名です。品種名「恋みのり」は、収穫(みのり)が多いこと、イチゴを通して託された想いが叶うようにとの願いを込めて命名されました(2018年品種登録)。

2. 高収量で、大幅な省力生産可能

「恋みのり」は大粒(約18g/粒)で、面積あたりの生産量(収量)は「さちのか」等よりも4~44%も多いです。また、果房(果実が付く枝)が良く伸びるので果実を見つけやすい。一つの果房にできる果実の数が適度なので、摘果(余分な果実を取り除く作業)などの栽培管理や収穫作業が軽減できる。大きさや形、着色、艶など果実の揃いが良いので、調製作業を軽減できる。このような特長があります。このため、例えば「さがほのか」と比較して、「恋みのり」は、栽培管理作業で約40%、収穫作業で約20%、調製作業で約30%も省力化が可能なのです。

3. 日持ち性が優れる果実

イチゴでは、収穫後の作業や輸送中での損傷を受けにくく、日持ちがすることがとても重要です。農研機構では、イチゴの主要品種について、一定の振動を与えたのち一定期間貯蔵した果実損傷発生程度を測定しました。その結果、「恋みのり」は多くの品種より日持ち性が優れることがわかりました。また、最大のイチゴ輸出先である香港への長距離輸送時において、輸送に伴う傷みの発生が少なく日持ち性が良いことが確認されています。

4. 恋みのりの輸出と九州SFCプロジェクト

近年、イチゴの輸出量が大幅に増加しています(2013年:127t → 2019年:962t、主要輸出先:香港、台湾)。輸出には、輸送中の果実の損傷を低減する梱包資材や輸送方法の開発と、輸出に向いた品種の生産拡大が重要です。

輸送振動試験機
輸出向け包装資材の例(宙吊り包装)

農研機構は、九州経済連合会や行政の協力を得て、九州沖縄経済圏スマートフードチェーン(SFC)プロジェクトを立ち上げています。その中で、イチゴの輸出促進に向けた課題解決と産地拡大にも取り組んでいます。日持ち性が良く長距離輸送にも適している「恋みのり」をモデルケースとし、果実の輸送性を向上させるための栽培条件や包装資材(写真)についての研究を行っています。

5. 最後に

以上のように、「恋みのり」は、消費者にとっても生産者にとってもメリットが多く、世界市場を狙える期待のイチゴ新品種です。

もっと詳しく知りたい方は、下記のページを御覧ください。

(注)

一般的にイチゴの実と呼ばれるところは、果実ではなく、()しべの土台となる「花托(かたく)」が大きくなったものです。この記事では、分かりやすく「果実」と表記しています。