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農耕地からの温室効果ガス発生を少なくする

近年、大気中の二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)などの温室効果ガス濃度が急激に増加しています。このことが地球の気候変動を引き起こし、農業生産や私たちの生活に影響を与えると考えられています。これらのガスは、化石燃料の燃焼や森林破壊などさまざまな原因により発生しますが、メタンと亜酸化窒素については農耕地土壌が大きな発生源となっています。

水田と畑から発生する温室効果ガスと水質汚染
水田と畑から発生する温室効果ガスと水質汚染

メタンと亜酸化窒素は、ともに土壌中での微生物活動により生成され、大気へと放出されます。すなわち、水田土壌のような嫌気(酸素のない)環境では、有機物の分解からメタン生成菌によりメタンが生成されます。また、畑土壌や草地土壌では、投入された窒素肥料が硝化菌や脱窒菌により変化を受ける過程で亜酸化窒素、一酸化窒素(NO)が生成されます。

本施設では、このような農耕地からの温室効果ガス発生を自動システムにより連続的に測定し、その発生量と発生制御要因を明らかにします。そして、栽培管理方法や肥料の量と種類を変えることにより、農耕地からの温室効果ガス発生の効果的な制御技術の開発を目指しています。

全体図

施設の模式図
施設の模式図

自動開閉チャンバー

水田用チャンバー 畑用チャンバー
水田用チャンバーと畑用チャンバー

土壌から発生したガスを捕集するため、上部が自動的に開閉します。各チャンバーは約30分間閉鎖され、その間のチャンバー内のガス濃度変化からガス発生量が計測されます。

肥料による地下水汚染を少なくする ― ライシメーター

ライシメーターの模式図 地下浸透水の採取部
ライシメーターの模式図と地下浸透水の採取部

本施設の調査区画はライシメーターになっているので、土壌中を浸透してきた水を採取・分析することができます。近年、農耕地由来の硝酸態窒素による地下水汚染がわが国や欧米において大きな問題となっていますが、本施設では、浸透水に含まれる肥料成分の濃度を調査し、地下水汚染を軽減する肥培体系の確立を目指しています。

この施設を活用した研究成果

図1
田畑輪換試験におけるメタンと亜酸化窒素発生

水田 を排水して畑作物を栽培すること(畑転換)によって、メタン(CH4)の発生はほとんど無くなりました。一方、亜酸化窒素(N2O)の発生量は、畑転換によって大きく増加するトレードオフ効果のあることを明らかにしました。

図2
硝化抑制剤入り肥料を用いた亜酸化窒素発生量の削減効果

異なる肥料を施肥して亜酸化窒素の発生量を比較した結果、硝化抑制剤入り肥料区からの亜酸化窒素発生量が少ないことが明らかになりました。