130.複合樹脂加工剤による絹織物の防しわ・黄変防止加工法(1993)

於保正弘、加藤 弘、武部 豊(1993)グリオキザール・水溶性ウレタン・ヒドラジンによる絹織物の樹脂加工.製糸絹研究発表集録 第41集:112-113

1.これまでに、絹織物の加工にジメチロールエチレン尿素と熱反応型を有する特殊な水溶性ウレタン樹脂を用いて、絹織物の欠点である防しわ性、耐摩耗性、黄変を改善できる加工法を開発した。しかしながら、これまでの加工法による絹織物は、日時が経過するにしたがってホルマリンが遊離する問題があった。そこで、厚生省で定められた残留ホルマリン規制値(75μg/g 以下)をクリヤーする安全性の高い加工方法を検討した。

 ※山口雪雄「絹織物のしわおよび黄変防止加工方法」(特許登録:15674171990年7月10日)

2.グリオキザール系樹脂に熱反応型水溶性ウレタンおよびジアルキルヒドラジンを加えた繊維加工剤を複合使用すると、5〜10%の低重合付着率にも関わらず、絹織物の乾・湿両防しわ性、とくに湿潤時の防しわ性が20%30%向上し、さらに現在最も効果のあるとされるチオ尿素・ホルマリン樹脂(TU)に匹敵する黄変防止効果が得られた。

3.加工織物の残留ホルマリンは、JIS試験により4050μg/g検出された。これは厚生省令によるベビー用品のゼロ値に対しては不適格であるが、一般下着、パジャマ、靴下等の75μg/g以下である規制値は完全にクリヤーすることが確認された。

4.本加工法では樹脂を絹に直接反応固着させるので、洗濯などによっても加工効果が失われない耐久性に優れたものとなった。しかも、ウレタン樹脂の柔軟かつ弾性に富んだ皮膜の形成によって、デリケートな繊維表面が保護されるので絹本来の風合い、柔軟性、吸湿性が損なわれることがない。


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