RNA抽出

 
 
  1. メニュー

  2. (1)原理と種類

  3. (2)準備

  4. (3)実際の手順

  5. (4)注意点


(1) 原理 と種類

 RNA はDNAと比較してきわめて不安定なため、必ず手袋をして、素早く操作を行ってください。抽出した後のRNAは必ず冷凍(-80℃または-20℃)してください。RNAを分解する酵素(RNase)はどこにでも存在するので、試薬から自分でRNaseを除くのは面倒です。RNAの抽出はキットをお勧めします。RNA抽出キットは、大きく有機溶媒を用いるもの(ISOGENなど)とカラムを用いるものに分けられます。どちらも十分な純度が得られますので、環境(有機溶媒をつかえるかどうか)やコストにより選択してください。


(2) 準備

様々なキットが市販されていますが、以下のものがお勧めです。

  1. 箇条書き項目 ISOGENTRI regentTRIZOL(これらはフェノール及びチオシアン酸グアニジンを含む溶液でほとんど同じです)

  2. 箇条書き項目MagExtractorTM -RNA(吸着性磁気ビーズを用いた精製キットです。幾つか種類があり、DNA用はRNAには使えないので注意してください

  3. 箇条書き項目カラムタイプ(RNeasyなど)も大丈夫ですが、多糖が多い試料ではカラムが詰まることがあるので、注意してください



その他の必要な試薬

  1. 箇条書き項目エタノール (ethanol)

  2. 箇条書き項目イソプロパノール (2-propanol)

  3. 箇条書き項目 滅菌脱イオン蒸留水

  4. (マニュアル等にはDPEC処理水を推奨していますが、EPEC処理は体とRNAに悪影響があるので、通常のRT-PCRではこれで十分です)


器具

  1. 箇条書き項目微量遠心機(可能なら冷却機能付)

  2. 箇条書き項目マイクロチューブ

  3. 箇条書き項目マイクロピペット(200μl〜1000μl用)

  4. 箇条書き項目マイクロチップ(20μl〜 200μl用)

(古いマニュアル等にはチューブや器具のDPEC処理を推奨していますが、通常のRT-PCRでは不要です)


(3) 実際の手順

ここでは、フェノール及びチオシアン酸グアニジンによるRNAの抽出を紹介します。

フェノールやクロロホルムが使用可能な環境では、日本 ジーンのISOGEN、シグマのTRI Reagent、ナカライのセパゾールが便利です。ここでは、日本 ジーンのISOGEN使った方法を紹介します(RI Reagent、セパゾールも全く同じ方法です)


  1. 1. 試料0.1gを乳鉢で磨砕する(堅い試料の場合は、液体窒素を使うか、乳鉢ごと-80℃で凍らせてから磨砕すると良い)

  2. 2. ISOGENを500μl添加し、マイクロチューブに入れる

  3. 3. 室温10 minまたは50℃で5分間加温する

  4. 4. クロロホルムを100μl加え、十分に混和する

  5. 5. 遠心分離15,000 rpm 5min

  6. 6. 上澄みを新しいチューブに移す

  7. 7. 等量のイソプロパノール(2-propanol)をl加え、15,000 rpm 15分間遠心分離 (室温放置は不要です)

  8. 8. 液を全て捨て、70%エタノールを100μl加える

  9. 9. 液を完全に除く

  10. 10.減圧乾燥(減圧乾燥器がない場合は、 10分間ふたを開けておいても良い)

  11. 11.-20℃で保存(RT-PCRを行う直前に蒸留水に溶解する)



  12. 抽出したRNAを使って、RT-PCRを行う場合はこちらへ(作成中)


(4) 注意点&FAQ

  1. 箇条書き項目沈殿が見えない!

  2. 箇条書き項目純度が高い試料ではRNAはほぼ透明になります。

  3. 箇条書き項目虫体1頭からRNAを抽出する場合 など、量が非常に少ない場合、沈殿を得ることが難しくなります。このままでは損失が大きいので、沈殿(上の手順では7)の際にグリコーゲンを1μl加えてください。


  4. 箇条書き項目沈殿が溶けない!

  5. 箇条書き項目多量の多糖が残っている場合、沈殿が溶けにくくなります。溶けない場合は無視してかまいません。


  6. 箇条書き項目RNAの保存法

  7. 箇条書き項目RNAはDNAに比べ不安定なので、蒸留水に溶解した状態で室温に長く置くと分解します。

  8. 箇条書き項目-20℃で保存すれば数ヶ月は保存できますが、長期保存は-80℃で行ってください。